僕を呼ぶ声 〈ようやく会えたね、お兄ちゃん〉 マユだ。 やっぱりマユだ。 突然現れたマユは、言うと同時に俺に抱きついてきた。 暖かい温もり……これは、幻……?? 〈ずっとマユのこと見てくれないんだもん。だから、あのお姉ちゃんと一緒に、ちょっと頑張っちゃったよ〉 あの、お姉ちゃん? 〈うん。マユと一緒に、お兄ちゃんの傍にずっといたお姉ちゃん!〉 マユは、とても嬉しそうに言う。 〈マユの携帯、大事にしてくれてありがと。すっごく嬉しかったよ。だからね、お兄ちゃん。泣かなくて良いからね〉 諭すようなマユの言葉を、俺は理解出来ずにいた。 泣く? 何を? 〈マユがお兄ちゃんのこと、守ったんだよ〉 優しく、やさしく、マユは続ける。 〈お兄ちゃんは、マユの分も生きて。マユの分も、沢山の人に会って。沢山のものを見て。マユの出来ないこと、いっぱいして〉 言いながら、マユが離れていく。 ゆっくりと。 〈お兄ちゃんは、こんな所でくじけないよね? マユのお兄ちゃんだもんね〉 マユの身体が光に包まれる。 消えていく。 直感的に、俺は気付いた。 これは別離。 本当の別離。 待ってくれ、マユ……俺は、まだ―― 〈寂しん坊だなあ、お兄ちゃんは〉 消えていく。 手を伸ばしても、届かない距離。 理解したくない。 けど、理解しなくてはならない。 〈だいじょうぶ〉 声が聞こえる。 姿の見えない、ステラの声が。 〈シンは、ひとりじゃないよ……〉 それはまるで、励ますような声。 その瞬間、意識化の世界は消えていった。 |