僕を呼ぶ声







白い世界を、俺は漂っていた。
現実ではない空間としか分からない、意識化の世界。


そこにあるのは、負の景色。



痛い。
苦しい。
悲しい。



信念が消えていく。


俺は、どこから間違ったんだろう。


議長の意志に賛同した所?
ザフトに入隊した所?
アスハを恨んだ所?


俺は……アスハを恨む資格なんて無い。
いや、恨んだんじゃないんだ。きっと……アスハを憎むことで、悲しみを封じ込めてきた。
生きる力にしてきたんだと思う。




「マユね、この間、カガリ様を見かけたんだよ!」




まだ戦争が始まる前、マユはそんなことを言っていた。




「私に笑いかけてくれたんだよ!」





マユは、カガリ・ユラ・アスハが好きだった。





「マユも、カガリ様みたくなりたいなあ……」





マユだけじゃない。みんな、アスハが好きだった。
なのにアスハの決断で、マユも父さんも母さんも死んでしまって。
だから、憎もうとして。



俺も……アスハが好きだったのに。



そんな簡単なことに、今更気付いて、一体どうなるっていうんだ?
こんな、こんな……
遅すぎる。



もう、全てが遅いんだ……





〈そんなこと無いよ〉





幻聴が聞こえる。
幻の声。
ずっと、俺に勇気を与えてくれた声。



……ステラの声……



こんな鮮明に聞こえるのは初めてだ。
もしかして……ステラが、俺を迎えに来てくれたのかな……



〈ちがうよ、シン。あいにきただけだよ。このこと、いっしょに〉



ステラの声が聞こえて。
目の前が、光り輝いて。

虚空に輝く光。それは……





マユ……?!


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