僕を呼ぶ声





――なんで一緒に戦ってくれないのよ……――




暗い地下への階段を下りるアスランの頭に、ルナマリアの言葉が鳴り響く。



〈行きたいさ……〉



行きたい。また、何もせずに、手遅れになる現場を見たくなど無い。
けど、彼は約束した。



〈頼んだよ〉



それは、キラの声。





〈ラクスのこと、お願いね〉





そう。アスランはキラと約束した。ラクスを守ると。
投降すると決めた時、彼はキラから、ラクスの安全を託されていた。
だから、こうやって自由に動ける内は、彼女が「突発的な負傷」に合わないよう警護するためにも、出来るだけ傍にいるようにしている。

気は抜けないのだ。この場に拘束されてから既に二度、彼女は身の危険に晒されているのだから。



〈今のラクスを襲って、どうなる……〉



それだけ、「ラクス・クライン」の名は脅威だということか。
さっさと審議を終わらせて、さっさと彼女の存在を消して……


そんなこと、絶対させない。
させてはならない。
そう意識を振るわせるアスランの耳に、話し声が聞こえてきた。
おかしい。この下には、ラクス一人しかいないはず。不安に駆られ、彼は階段を駆け下りた。
そこに居たのは――


「……議長代理……?!」
「なんだ、君か。やけに大きな足音だから、びっくりしたよ」

アスランは目を丸くした。
自分を解放したクルゾフ議長代理。アスランを解放した本人が、まさかこの場に足を運んでいるとは考えもせず。

「……貴方がなぜ、ここに?」

警戒を解くことなく、アスランは問う。
彼の中では、過去二回の「ラクス暗殺」を企てたのは重要容疑者の一人なのだ、クルゾフは。
そんな中、彼がここに来た理由を話したのは、ラクスだった。

「議長代理は、報告に来て下さったのですわ。私の審議日が決定したということなので」
「無理矢理だがね」
「私のことに構っていられる場合ではないと思いますが?」

にこりとラクスは問い返す。
しかしクルゾフは、さも当たり前とばかりに言い放った。

「プラントにとっては、君の処分以上に大事なことなど存在しないよ」
「貴方はそんなに、ラクスが邪魔ですか?」

アスランが睨みつける。当然のことだが、好意的な感情は全く存在しない。

「早々にラクスを片付け、自分の権威を主張したいようにしか見えませんよ?」
「本当に分かってないね、アスラン・ザラ」

冷酷に、クルゾフはアスランを見やった。

「こんなにも沢山の情報を与えてるのに、君は何も見えていない」
「……何が言いたいんですか」
「もう一度、情報を整理してみろ。もう一度、自分の置かれている立場をしっかり見てみろ。君は何故外に出た? 何のために動いている? 君が今持つピースだけでも、少なくとも私が彼女をどうしたいか位は分かる筈だぞ?」


まるで挑戦するかのごとき言葉に、アスランは言葉を失う。
拭えぬ不審。話せば話すほど、嫌な空気が彼を包む。


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