僕を呼ぶ声


ここには沢山の人がいる。
沢山の仲間がいる。
メイリンはいつも家でご飯を作って待っててくれる。
休みの日は、ヨウランやヴィーノが遊びに来てくれたりする。
そういえばこの間、副艦長――もとい、無事ミネルバの艦長に就任したアーサー元副艦長も様子を見に来てくれた。


シンもいる。


どこにいるか分からないけど、プラントのどこかに、シンもいる。
再びこの星を、戦火にさらさせたりしない――


意志が固まる。
強い意思。その表情に、ルタは安堵の色を浮かべた。



〈これなら、大丈夫だな〉



そう、感じた時だった。


「ったく、どいつもこいつも鬱陶しい!!」

罵声と共に、イザークが演習場に姿を現した。

「その鬱陶しさで苛々最高潮の隊長様に付き合ってる可哀想な部下に、ねぎらいの言葉の一つくらいかけてやろうとか思わない?」
「思うか!!」
「だろうねえ」

くくっと笑い、ディアッカは、ルナマリアとルタに手を振った。
会釈で返す二人の姿を指し、ディアッカは続ける。

「ほらほら、可愛い後輩たちも怖がってるぞ?」
「怖がらせておけ!」
「へいへい」

今度はディアッカ、肩を竦めるだけ。
そして先輩二人は、無造作に銃を構えて連射した。弾丸が尽きると予備の銃に持ち替え、三連撃。その精度の高さに、二人は息を呑む。
イザークは、ひたすら一点を撃ち続け。
ディアッカは、撃ち抜く所はバラバラだが、それらは全て、要所要所を押さえた部位。

「すご……」

こんなに高い射撃センスを間近で見るのは本当に久しぶりで、特にルナマリアは、身動きが取れなくなってしまう。

「少しはすっきりしたかよ」

手元の弾丸を全て撃ちつくした所で、ディアッカは尋ねた。温和に問いかけたディアッカに対し、イザークは――

「するか!!」
「じゃ、もう一ラウンドいくか?」

怖い。いつも以上に恐ろしいオーラを放っている。
どれほど苛立つことがあったのか――彼のストレスは、発散され尽くす様子が全く見られない。

「そっちの二人もよ、人の見物してないで、練習しとけよ」
「って言われても、そんなすごいの見せられたら、手も止まりますよ……」

ルナマリア、素直に呻く。

「でも、じろじろ見てると、うちの隊長の八つ当たり対象が、お前らに移動するかもしれねーぞ?」
「八つ当たり……?」
「おう。ほら、今回の相手――」
「――ディアッカ」



じゃきっ。



笑いながら言うディアッカの後頭部で、何やら不穏な音が響く。
それは弾丸を転送した音。これで引き金さえ引けば、発砲出来る状態だ。

「それ以上しゃべったら殺す」
「……洒落になってねーよ……」

イザークの低音ボイスに、ディアッカはホールドするしか道は無かった。





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