冷たい銃声


「レイが生きるには、薬が必要だ。そしてそれは、うちの会社で作っている。意味は――分かるな?」
「先生っ……」


シンは悔しさでいっぱいだった。
生きていたレイ。でもその命は、一人の男によって握られている。


「シン……レイやミリアリア嬢とともに、俺の手助けをしてくれないか?」
「……嫌です」

擦れた声で――しかし、はっきりと。
その声が、ライドンにある決断をさせた。




「……残念だよ、シン」




ある決断――それは、引き入れることが出来ないと見切り。ライドンは静かに、懐に手を伸ばした。
カチャリと音が鳴る。
取り出されたのは、とてもとても、小さな銃――……

「大丈夫。苦しめたりはしないさ。俺の射撃の腕前は、よく知っているだろう?」

受身を取ろうにも、相手は拳銃。しかも射撃体勢に入られ、身動きすら取れなくなる。
ライドンはシンの元担任であり、射撃科の教師でもあった。そして教員になる前は、ザフトの「赤」を纏った時期もあるほどの実力者。
士官学校卒業試験の射撃部門において、ライドンの成績を書き換える人間は、未だに出ていない。

「せんせ……」
「――おやすみ、シン」


冷酷な声。
乾いた音。
煙を吹く銃口。


刹那、シンは左胸を押さえ――……力無く倒れていった。



「本当に残念だよ……シン」



呟き、ライドンは携帯電話を取り出す。

「……ああ、俺だ。地下倉庫にゴミが落ちてるから、掃除を頼む」

部下に用件だけ告げ、すぐに電話をしまう。
そして、ぴくりとも動かないシンを一瞥し、ライドンはエレベーターに乗り込むのだった。




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