冷たい銃声



「ああ、そうだ。この間軍本部で、ルナマリアとも会ったぞ? お前ら、連絡とか取り合ってるのか?」
「ルナ……と?」

瞬間、シンの表情が強張った。
思わぬところで出た思わぬ名前に、シンは固い表情のまま、訊く。

「ルナ……軍にいるんですか……?」
「ああ。それが、どうかしたか?」
「いえ……」

素直に驚いた。戦争が終わった時、もう軍人を辞めたいと、彼女は訴えていた。故にシンは、ルナマリアは除隊したとばかり思っていたのである。
事実、ルナマリアは除隊している。しかし一週間ほど前、復隊した。それが、自分に繋がる情報を知りたいためだと言うことを、今のシンに知る術は無い。

「……まあ、せっかくだ。お茶でも飲んで行けよ。ミリアリアさんも」
「え? 私もですか?」
「教え子の今を色々訊きたいしな。で、お付き合いはいつ頃から?」
「お――お付き合い?!」

かなりのオーバーリアクションをするシンに、ライドンは不思議な眼差しを送った。

「……シンの彼女じゃないのか?」
「違います!」
「なんだ、つまらないなあ……」

きっと、シンを色恋沙汰でからかいたかったのだろう。ライドンは、途端につまらなさそうな態度を見せた。

「だが、彼女じゃなくても、放っておくのは心許無い。どうですか?」
「いえ、私は……お邪魔じゃないなら……」
「なら決まりだ。二人とも、中にどうぞ」

案内される中、ミリアリアはとても奇妙な感覚に支配されていた。
単純に、デュッセルカンパニーに興味がある。それに、遠慮する――なんて言葉の出せる空気でもなく、流されるように頷いたミリアリアだが、どうも心がざわつく。

落ち着かない。
気になっていることもある。

「……あの、ライドン会長……」
「何かな?」

どうしてもどうしても気になってしまい、思い切って、ミリアリアは尋ねてみた。

「…………以前どこかで、会ったこと……ありますか?」
「――なぜ?」

ミリアリアの質問に、一瞬ライドンのこめかみが上がる。
強張ったような……本当に一瞬見せた表情に、ミリアリアも顔を強張らせ、

「その――っわ!!」

核心付こうとした瞬間、ミリアリアの身体は、前を歩いていたシンの背中にぶつかった。


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