冷たい銃声





〈とにかく、メイリンとシン君を、ちゃんと話させてあげないと……〉


――と思った時、呆然と座り込むシンに変化が起こった。
目が、見開かれる。
ミリアリアを見て――いや、違う。その奥だ。
シンの視線は、彼女の背後に降り注がれている。

何事かと振り返ると、路地の中に人影が消えていくのが見て取れた。


今のは誰?


ミリアリアは知らない。
けど、シンは知っている。


大事な友達。
大切な存在。
居るはずの無い人。


だけど、見間違えるはずが無い。


「――あ、シン君!!」


完全に姿が見えなくなったその瞬間、シンは走り出していた。
何も考えず、ただ、幻のような「彼」の存在を追いかける。



まるで「導き」のようにも感じた。
二人の距離は縮まらない。
かと言って、離れもしないその距離に。



「待て――……なんで逃げるんだよ! なあっ!!」



シンの問いかけが聞こえていないのか、前方を歩く「少年」は、自分の歩調を守るだけ。


「〜〜レイ!!」



色素の薄い黄金色の髪が、風にたなびく。
一瞬だけ肩を震わせ、一瞥する少年は――やはり、彼。





レイ・ザ・バレル――





「…………」
「だから、待てって!」

名を呼ばれ、レイは突如走り出した。まるで追跡者を振り切ろうかと言うほどのスピードに、シンもまた、追跡の速度を上げる。


追いついて――捕まえるために。


「レイ――!」


レイの消えた曲がり角を抜け――そこで、シンの足は止まった。
広がるメインストリート。それまで人通りの少ない道を通ってきたシンは、急に溢れんばかりの人の波を映し出されたおかげで、軽い眩暈に襲われてしまう。
この人ごみの中、レイの姿は……見つけられない。

「シン君!」

数秒遅れて、ミリアリアも追いついてくる。

「どお? 捕まえ――てはないか」

訊くまでも無く、それらしい人物がいないのを確認し、彼女も落胆する。

「でも、まだこの辺にいるだろうし、一緒に探せば……」
「……探して……良いのかな……」

虚空を見上げ、シンは小さくつぶやいた。


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