歯車の噛み合う時




プラント、ザフト……いや、ギルバート・デュランダル、と言うべきか。戦争の最中、議長として類まれなる手腕を発揮していた男との戦いが終わって、三ヶ月が経った。
戦争終了後、ミリアリアは即座にAAを降り、ジャーナリストに戻った。そして今、マスドライバ設置ドックのロビーに佇んでいる。

プラントへ行くために。

未だオーブとの和平条約の締結さえも模索中のプラントへ彼女が行くと決めたのには、確固たる理由があった。
プラントの姿を、写真に収める。そして地球の人々に、ちゃんと伝えるために。

ナチュラルとコーディネーター……遺伝子をいじってるとか、能力格差があるとか、そんなことをぐだぐだ責め合ってもしょうがない。
同じ人間であり、別の人種。それで良いじゃないか。
コーディネーターも、本質は同じであることを多くのナチュラルに知ってもらいたいから、プラントに行こうとしているのだ。

実際、彼女の写真には説得力がある。
戦場で、戦艦で、写真を取り続けたミリアリア。除隊後、彼女は自分のとった写真で展示会を開いたところ、思いもよらぬ大盛況となったのである。

傷つく人。傷つく機体。戦闘後の疲れ果てた船の中。悲しみに染まる戦場。

知ってほしい――その想いだけで撮り続けた結果、写真には魂が宿り、人々を震撼させた。
思いは伝わる。ならば、もっと思いを伝えよう。

「……そろそろ、ね」

シャトル発射の時間が迫り、ミリアリアはトランクを手に、乗降口へと向かおうとした。

「ミリアリア!!」

声をかけられる、その時までは。
金の髪を揺らし、多くのSPを引き連れ走りくる少女は――

「カガリ?!」

その姿にめまいを覚える。多忙極める国の代表が、どうやってこんな所まで来る余裕を作れたのか。

「行くなら行くって、もっと大々的に言っていけよ! 何だよ、留守電に一言、『プラントまで行ってきま〜す』って!!」

膝に手をつき、肩で息をするカガリは非常に怒っている。
一方でミリアリアは、慌てた様子も無く、当たり前と言わんばかりに言い切った。

「だって、忙しそうだし」
「う」

そこを突かれては、カガリに返す言葉はない。

「オーブ出る時は知らせろって言ってたから、せめてメッセージだけでもって」
「……だが」

ふい、とカガリは目を反らした。

「プラントは今……危ないんだ」

それは知ってる。渡航制限がかかっているし、何よりミリアリアは職業上、その手の情報には詳しい。
カガリとしては、彼女をみすみす危険な場所に行かせたくない。


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