プラントの鼓動


「レベッカの操縦士は意識不明の重体だと聞いている。それくらいの怪我で済んで、良かった……」
「教官……」
「じゃあ、そろそろ失礼するよ。機会があったら、会社にでも遊びに来てくれ」
「はい」

軽くルナマリアの背中を叩き、ライドンと男達は再び歩き出した。
彼らの後姿を眺めながら、ルナマリアは思う。


もう、失敗できない――
失敗してはいけない。
自分のミスは、予想外の所まで影響を及ぼすのだと。


そう思ったら、少しだけ恐怖心が増した。すぐとはいかないまでも、数日中には再び戦場にかり出されるだろう。その時、自分は昨日のように操縦桿を握れるだろうか。


〈……シホさん……〉


同シリーズに乗っていたジュール隊の赤・シホが、未だ意識が戻らない状態であることも、ルナマリアの恐怖心に拍車をかけた。
だが不思議と、戦闘意欲も増す。


宇宙海賊ドゴラ――彼らを野放しにしては駄目だ。絶対、よからぬことを考えている。
廊下の先を強く睨みつけると、ルナマリアは走り出した。
向かうは作戦会議室。きっとそこに、アスランがいる。


彼は、自分の知りたいことの全てを知っているはずだ。


「アスラン!」

強めの声と共に扉を開くと、中にはアスランを筆頭に、ジュール隊、そしてウーレス隊の面々が顔を突き合わせていた。

「ルナマリア、お前、動いても大丈夫なのかよ」
「平気です」

心配するディアッカに目もくれず、彼女はアスランの前に立つ。

「どうした? ルナマリア」
「教えてもらいに来ました」
「何を……」
「貴方が知っていること、全てです」


自分は、知らないことが多すぎる。
ドゴラの狙い。そして軍に戻る原因となったのは、シンの情報を知るため。
そのどちらも、まだルナマリアは訊いていない。



彼女には、知る権利がある。



「シンのことも、ドゴラの狙いも、全部です」
「……丁度良い。今から皆に、奴らに関する話をするつもりだったんだ」

フッと優しい笑みをこぼすと、アスランはルナマリアを椅子に座らせ、呟いた。

「これは俺の推測だが、シンは今、ある物を探してるんじゃないかと思う。それは……多分、ドゴラが狙っているものと同じだ」

アスランの言葉に、ルナマリアの目の前は真っ暗になった。





*前次#
戻る0

- 28 /189-