プラントの鼓動




翌朝、指令本部は騒然としていた。


「……『運命』と『正義』が修復されていたとは、考えもしませんでしたよ」


皮肉全開に言うは、三十代前半と思われるスーツ姿の男性。
対峙するは――


「一般人に言うことでもないだろう」


熟年層に入ったばかりの、評議員服を纏った男性。


「いいえ、とても重要な問題ですよ。こっちは新型導入案を蹴られてるんですから……だからザク改良で手を打ったのに、それは『伝説』の前に、成す術なく壊されてしまった……」
「半壊だ。MSにはよくあることだろう」
「……解せませんね」

眼光鋭く、スーツの男が評議員の男を見る。彼を――そして、彼の後ろに肩を並べる、数人の評議員達を。

「新型導入は地球を刺激する……その言い分は理解できましたが、あれを直すことは、地球を刺激することに繋がらないんですか?」
「その件は、オーブを介して既に伝わっている。向こうも了承済みだ」
「さすがは現議長殿。根回しの良いことで」
「議長ではない。議長代理だよ、会長殿」

目に見えない戦いの火花が、二人の間で強く舞う。

「……ラクス・クラインにしてもそうだ。何故彼女は、未だ審議中なんですか? 彼女の罪は明白でしょうに」
「重罪に問われているからこそ、審議は長引くものだ。それに……彼女の審議はもうすぐ終わる」
「ほう? それはまためでたい」
「3日後、彼女は最もふさわしい方法で裁かれる予定だよ。楽しみにしていると良い」
「もちろん」


不敵に笑い、スーツの男は評議会室を出た。
残された評議員達は、一気に『議長代理』を囲む。


「おい、あんなこと言って……まだ、ラクス・クラインの件は承認されてないぞ?!」
「あれが一番良い解決方法だろう?」
「だが……!」

何人かの評議員は、彼の決断に反対していた。

「彼女が『正しい』と言い切れるのか?!」
「何が正しくて、何が間違っていて……そんな論点で議論する気はない」

議長代理は言い切る。

「我々に今、一番必要なものは、真実の価値ではない。何が一番、信じられるかだ。何を信じればよいのか、何が信じるに値するものなのか。君は、プラントの住人が信じられる存在は何だと思う? ザフトか? 評議会か? もっと大きな存在があるだろう」
「……確かに」

反対していた者達も、認めざるを得ない事実。


プラントは、ラクス・クラインを愛している。


「ラクス・クラインは必要なのだよ、プラントが再興するためには」

外を見、青い空を目に映しながら、議長代理はつぶやいた。



「だから……彼女は思い知らなければならない。そのための『審議』なのだから」





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