ザフト襲撃


〈目的は、奪われたMSを取り戻すこと〉


自分の中で任務を再確認し、ふと、懐かしい感覚に襲われた。
そう言えば……初任務も確か、MSの回収だった。結局取り戻せたのは、ガイアだけだったが……


〈……何、思い出に浸ってるのよ……〉


感慨にふけってなどいられない。ルナマリアは素早い手つきでレールガンを転送させ、うち一機をロックオン状態まで持っていき――

「……うそ……」

驚愕の声がもれる。

モニタに映し出されるその機影は……見間違えるはずなど無い。


――レジェンド――しかも二機。


「なんで、レジェンドが……どうして!!」
《落ち着け、ルナマリア! おかげで奴らの正体が分かった》
「正体?!」

サイドモニタに現れたルタに、ルナマリアは不審の瞳を投げかける。

《レジェンドは、メサイアから盗み出されたと聞いた》
「盗まれたって……」
《海賊・ドゴラ。名前くらいは知ってるだろ?》

知ってる。何度もニュースで見た名前だ。
奴らが……レジェンドを、レイの機体を操っている??
怒りがこみ上げる。
身体を支配する。



レイはもう、いないのに――



「レジェンド、を……」

我知らず、ルナマリアは吼えていた。


「レイの機体、勝手に使ってんじゃないわよ!!」


感覚が研ぎ澄まされる。
クリアになる視界。
何もかもが、流れるような動きだった。

突撃するルナマリア機は、ビームを紙一重で避け、至近距離からレジェンドにレールガンをお見舞いする。しかし『レジェンド』もまた、レールガンを受けることは無かった。神がかりといっても過言ではない運動能力でかわすと、ビームサーベルを抜き、尋常ではないスピードで切りかかってくる。

「!!」

ルナマリアは――かわすのが精一杯だった。援護を頼もうにも、ルタは自分より苦しい状況、二対一の苦戦を強いられている。
自分一人で何とかしなくては。
突進してくるレジェンドに、彼女はシールドを投げつけた。それは当たり前のようにかわされ、何事も無かったかの如くこちらに向かってくる。
こうなることは分かっていた。こんな攻撃、どんなに使えないパイロットが操縦していたとしても、機体性能だけでかわされてしまうほどのものだから。

なら、なぜ投げたのかと問われれば――不意をつくため。

直進していたシールドは、突如向きを変え、もう一度レジェンドへと走っていく。
エルザに装備されたシールドは、身を守るためだけのものではない。遠隔操作も可能なので、飛び道具としても強い威力を発揮する。まともにやっても駄目なら背後から――ルナマリアはそう、策を練ったのだが……シールドがレジェンドに突進する中、かの機体は、やけにあっさり避けてしまった。


〈これも駄目?!〉


焦りが生まれる。
接近戦なんてやったら、ひとたまりも無いのは目に見えている。遠距離戦でもまた然り。
中距離で、こちらのペースで戦えれば戦況はまだ違って来るものの、レジェンドはそれすらもさせてくれない。

どう戦う――?
対処の仕方が分からず、ルナマリアに一瞬、隙が出来た。
その隙が――レジェンドに大接近を許してしまった。

「!!」

光る剣が、モニタいっぱいに広がる。


――避けられない――!!


訪れる『死』の恐怖が、ルナマリアの動きを制限させた。
操縦桿を握る手が、恐怖で固まってしまう。

動けない。



わたし――しぬ?!


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