アスランとカガリ


「悲しくなってくるな」

夜空を見上げ、カガリは呟く。

「どの辺が、悲しいんだ?」

カガリの横に立ち、アスランが問う。
二人がいるのはオーブ官邸。白の際立つベランダに立つ二人は、心持ち寂しそうに、空を見上げていた。

「……こんなに……遠い」

伸ばした手は、虚空を掴む。
カガリの言わんとすることは、アスランにも伝わった。
遠く遠く、あの空の向こうに、愛すべき人たちがいる。
手を伸ばしても届かない……それはまるでナチュラルとコーディネーター、二つの人種の距離のよう。
思うことは同じでも、同調しきれないもどかしさ。

「……そんなに、悲観するものじゃないさ」
「アスラン?」

暗い顔をするカガリを励ますよう、アスランは彼女に手を重ねる。
不思議そうに見上げるカガリ。アスランの瞳は、どこまでも透き通っていて。

「少しずつでも、一歩ずつでも、どんなに時間がかかっても……確実に近づいている」
「そうかな」
「じゃなかったら、オーブ−プラント間で、こんな頻繁にトップ会談なんて行われないさ」

明日、カガリは地球側の代表の一人として、プラントの議長と、ここオーブで会談を持つ。前回の会談から半年と経っていない時点での、再びの開催。数年前には考えられなかった状況だ。
アスランがオーブに戻って半年……少しずつ、少しずつ、ほんの少しずつでも、彼女達は、自分達の目指す未来に向かって歩いていた。




結びのコトバ
夜空を見上げ、物思いにふけるカガリ。その隣には、アスランがいる…


*前次#
戻る0

- 180 /189-