運命の交差 「…………?」 不思議だった。 まず、目が開いたことが不思議だった。 そう。目が開いている。目が、視界が、自分のいる部屋が『白』をベースに構成されていると教えてくれる。 ……生きている? 「大丈夫? まだボーっとしてる?」 視界の中に、無理矢理入ってくる男がいる。レイは彼を、よく知っていた。 キラ・ヤマト―― 「……にを、して……」 「君の看病。それと、術後の経過観察」 「?」 話が見えない。 訳も分からず起き上がろうとすると、慌てたキラに止められる。 「待って待って。まだ安静にしてないと」 「安静にしていたところで……どれだけ生きられるというんだ」 投げやりに、レイは言う。 どうしてまだ生きているのか。意識を失う直前に感じた絶望感は、間違いなく『死』が近づいた証だと思ったのに。 そんなレイに、キラは言う。 「君がどれだけ生きられるか、なんて誰にも分からないよ。僕だって、自分がどれだけ生きられるか分からないし」 不思議な物言いをされ、レイは首をひねる。 キラは続けた。 「一ヵ月後、君のテロメアを正常な状態に戻す手術をするよ」 「テロメアを……?! どうやって!!」 「議長の残したデータを使ってね」 頭が真っ白になる。思考が着いていかない。 彼の言葉を信じるなら、あとわずかと思われたレイの寿命は延びたことになる。けど、そのために必要なものは、全て揃っていなかったはずだ。特に遺伝子の方は、サンプル段階で―― ――そこまで考えて、エルザでのライドンの嘲笑が蘇った。 「彼女は――ミリアリア・ハウは――」 「大丈夫。異常物質は全部取り除いたから、遺伝子系統にも支障は出てないし……君より全然元気だよ。ああ、ほら。あそこ」 キラが窓の外を指差すので、レイもつられて外を見た。 栗色の髪の毛を外側に跳ねさせた女性が、背の高い金髪男を連れて、外を闊歩している。 「寝てばっかりだと身体がなまるって言って、ただ今散歩中」 おかげで、ミリアリアが心配で心配でしょうがないディアッカは、彼女に付き合って、これまた散歩の最中だ。 |