シン


「大丈夫だよ、ステラ……俺、分かってるから」


その言葉に呼応するかのように、シンの手に、温もりが生まれた。
誰かの手が乗っているような感覚。だが、もちろんそこに、誰かの手があるわけではない。
シンの手しかない。
それでもシンは、語り続ける。
心配してやって来たであろう、彼女に。


「あいつに、言ってやりたいこと、たくさんある……」


ステラがどんな女の子だったのか。
どれだけの悲しみを秘めていたのか。
戦うことが、どれだけ嫌いな女の子だったのか。


幻を掴むよう、シンは手を重ねた。


「俺はステラを忘れない」


それは誓い。


「俺が、ステラの優しさを覚えてる。
 思い出を覚えてる。
 あいつを許せなくても、それでも……
 それでも、俺は――」


フリーダムへの因縁を振りほどくように、前を見やる。
同時だった。



〈ありがとう、シン〉



幻聴のように、ステラの声が聞こえた。


〈ステラ……シンにあえて、よかった……〉


ステラが重なる。
シンの中に。
まるで、溶けていくように。





シンの瞳から、涙がこぼれる。
刹那、その瞳が、赤い種を弾けさせた。








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