シン





シンは、不思議な気持ちだった。
目の前に、フリーダムがいる。
憎くて憎くて仕方なかった、フリーダムがいる。
手が、震えだす。
けど、この巨大兵器を沈めることが、自分やミネルバの力だけでは難しい――など、火を見るより明らかだ。
協力が必要。


そして蘇る、ステラとの思い出。


〈どうしたら……憎しみは消えるんだろう……〉


シンは考える。
フリーダムを許すつもりは無い。今でも憎い。
同時に思うのはこのパイロットにも、自分と同じように、大事な人、大事に思ってくれる人がいるのではないか、ということ。
フリーダムがステラを殺したことで、自分はこのパイロットを憎んだ。だから自分がフリーダムを落としたら……やはり、同じように、自分を憎む人間が出てくるのではないか、と。
以前、自分によってフリーダムが落とされた時、とても心配した人間だっていたのではないか、と。


怖くなる。


怖くて、とても怖くて……
憎しみと恐怖。二つの感情に押しつぶされてしまう。


そう感じた時、すぐ傍に、懐かしい気配を感じた。
自分しかいないコックピットに、自分以外の、もう一人の気配。



カンパニー地下で、デスティニーを起動させる時に感じたものと、同じ安らぎを。





「……大丈夫……」




シンは呟く。
形無き気配に語りかけるように、優しく呟く。


「許せない……けど……大丈夫」


シンはキラを許すことが出来ない。許せない相手。
でも、許せないことと、憎しみを向けることは違う。





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