伝説の嘆き



「はい、こちら――」
《――ルナマリア?! ようやく繋がった……》

聞こえてきたのは、これまた安堵するアスランの声だった。

《随分探したぞ。今、どこにいる?!》
「え? エルザの中ですけど……」
《じゃ、すぐ宇宙に出てくれ。一刻も早く》
「でも……」

不安気にレイを見る。彼は言葉も無く、先へと足を進めていた。
追いかけなくては、また見失ってしまう。

《ここ一帯は、巨大兵器の塊なんだ》
「知ってます。ここに、その制御装置があるんですよね」
《だが、動力源は別にある。ローズシリーズの機能を使わない限り、止めるのが難しい厄介な代物だ。それに、その場にエルザがあると、かなりまずいことになる》

アスランが言う『厄介なこと』は、間違いなくLシステムの起動だろう。
しかし、すでに起動してしまっているし、自分はここにいる。


「システムはもう起動してます。だから、制御盤を――」
「――行けよ、ルナ」


シンが言った。
この場に残る意思を示そうとしたルナマリアの通信機を掴み、音声を遮って。

「こっちは俺らで何とかするから、ルナはそっちを頼む。両方叩くほうが確実だ」
「けど――」
「大丈夫。私がついてるから」

にっこり笑うはメイリン。

「任せたぜ!!」

言って先にシンが走り出す。

「必ず二人とも連れて帰るから、お姉ちゃんは行って」
「あ――」

二人がレイの元へと走り出す。
シンが。
メイリンが。
レイが。

みんな、扉の向こうに消えていく。



ルナマリアは――また――取り残されてしまった。



《ルナマリア、聞こえてるか?! Lシステムが起動してるって――》

通信機から聞こえるアスランの呼びかけ。
一度強く通信機を握ると、ルナマリアは大きな声で返した。


「今行きます! 詳しい話は、追って!」


それは、自分への一喝も含まれている。
もどかしさを感じている余裕など無い。さみしさを感じている余裕など、もっとない。
ルナマリアは通信機を手に、三人とは反対の方向へ走り出した。





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