伝説の嘆き




「……え?」


見ると彼女の手は、誰かの手によって掴まれていた。


だれ?


おぼろげに、人物を探す。
身体を引き上げられ、ようやく彼女は、その正体を知った。
軽く息を切らせた、レイを。


「――……!!」


同時に彼女は、背中を壁につけた。
距離をとる。
レイから、逃げるように。



どうしてレイが、ここに?



レイは、
死んだはず、
なのに……
生きてる?


生きて、
私の前に、
いる、
のは、


なぜ??



思考がおかしな方向に走っていく。
突然、死んだと思っていた人間が現れたことに驚いただけではない。それ以前の問題が、彼女の中にあった。

「……メイリン、こんな所で、何を……」

言いながら、メイリンへと手を伸ばす。すると彼女は、びくんと身体を震わせた。
目が訴えるのは、恐怖。
驚き以前の問題。彼女はレイに命を脅かされている。最後に見たレイは、自分に銃を突きつける姿だった。
彼女の心情を察し、レイはメイリンに近づくのをやめる。

「……下に、ルナマリアがいる。行くぞ」

乱れた呼吸を整え、レイは先に歩き出す。その後ろを、少し送れてメイリンは続いた。
彼は不思議に思う。なぜ自分は、彼女を助けたのか。
先を急がなくてはならないのに、上空から聞こえた悲鳴と物音に見上げてみれば、階段にぶら下がっているメイリンの姿。
頭で考えるより、身体が彼女を助けに向かっていた。
分からないまま、ただ、助けなくては、と。

「お姉ちゃん!!」
「メイリン!! あんた、どーやってこんな所に――」
「ごめん、色々あって……え、シンもいるの?!」
「――え、あぁ……うん……」

シンもメイリンがエルザにいること自体に驚いたが、それを表現する前に、先に自分の存在を驚かれてしまい、素直に驚けなくなってしまった。
メイリンの明るい声に――何故だか安堵感を覚え――レイは三人から離れようとする。その時、ルナマリアが装備していた通信機が音を鳴らした。





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