伝説の嘆き 「だから、一人で何でもやろうとすんじゃねーって――!!」 まったく相手にされていないことに怒りながら部屋を出たシンは――思わず立ち止まった。 「シン?! どう……」 続いて飛び出てきたルナマリアも、足を止める。 レイが――いない。向こう岸の扉を開けて進んだ――にしては、開いた形跡が無い。この短時間なら、少なくとも閉まった音くらいは耳に届くはずだ。 その時、ルナマリアが何かを見つけた。 「――シン、上!!」 彼女の声に導かれ、シンもまた、上を見た。 「痛ッ……」 痛くて泣き出しそうになりながら、メイリンは必死に、冷たい階段を掴んでいた。 落ちた。彼女は確かに、階段から落ちた。けれど、すぐさま現れた次の段に手をかけることに成功し、どうにか這い上がろうと頑張っていた。 けれど、これ以上腕に力が入らない。上るどころか、これ以上落ちないようにするので精一杯だ。 「どうしよぉ……」 身体一つで降りられる距離でもない。 手から力が抜けていく。 「こ、んな、ところで……」 それでもメイリンは、もう一度、手に力を込めた。 彼女には、大きな決意と覚悟がある。 「こんな、ところで、ぐずぐずして、なんかっ……」 Lシステムを壊す。 ミネルバに乗っているクルー全員の使命を、彼女は自ら請け負ったのだ。何としてでも、大事にしまったディスクを制御装置に読み込ませなければ。 両腕に力を与え、必死で身体を上げる。しかし、手だけでなく腕も平面にたどり着いた、そう思った瞬間、しっとりとかいた汗が、冷たい階段から手を滑らせた。 再び空中に舞う身体。 声無く、落ちていく―― その時、手が、ひとの温もりを捉えた。 |