伝説の嘆き







「――メイリンッ!!」

メイリンが落ちる様を見ていたミリアリアが、悲鳴と共に立ち上がった。
カメラを動かしても、レンズの捉える範囲に、彼女の姿を見つけることが出来ない。

「どうしよう、ディアッカ! メイリンが――」
「落ち着けって! ここで騒いだって、どうしようもないだろ!」

ディアッカの言う通りだ。こんな閉鎖空間で騒いだって、向こうの音声は届いても、こちらの声を届けることは出来ないのだ。


「……なんで私、こんな所にいるんだろ……」


自分の無力さが悔しい。
なぜここで、こうやって、起こってることを「観る」ことしか出来ないのか。
悔しい。とても悔しい。

「大丈夫だ、ミリアリア。きっと……」

ぎゅっとミリアリアの肩を抱き、ディアッカは呟く。
奇跡に近い希望を。

「……それに、この下は――……」









「……やはり、どうにも出来ないか……」

手すり無し、足元の不安定な螺旋階段を駆け下り、レイは三人が再会したホールの一階下にやって来た。
そこもまた、同じようなホール状になった部屋。その中央にそびえる――上で見た塔と同じ、試験管のような透明の筒につく装置を色々いじってみる。
システムの制御装置に、せめて起動までの時間を稼ごうと干渉を試みた行動だが、やはりというか――……叶うことは無かった。
苛立ちが一層強まった時、レイが入ると自動的に閉まった扉が再び開いた。シンとルナマリアが入ってきたのだ。

「来るなと言ってるだろう……シン、ルナマリア」
「無茶言うな!!」

歩み寄りながら、シンは反発する。

「どうやってお前置いて、帰れっていうんだよ。折角会えたのに!!」
「……会えたって……」


――のん気な事を――と続けたかったレイだったが、それは出来なかった。
今にも泣き出しそうな瞳が、追撃を許してくれない。
それはルナマリアも同じだ。


「みんな、どれだけ心配したと思ってるの?! シンもよ!! ここで離れたら……また、二人ともいなくなっちゃう気がして嫌なのよ!!」


みんなで一緒に帰りたい。
その思いが、ルナマリアは強くて。
シンには、痛いほど気持ちが分かる。同時に、ルナマリアに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
随分心配かけてしまった。自分がいないことで、大きな苦痛を与えてしまった。



「……そういう理屈が通るような状況じゃない」



レイは呟き、シンとルナマリアをかわし、再び走り出す。階段を上ることも無く、今度は部屋を突き抜けようとして――


「――?!」


その瞬間、レイはハッと上を見た。
耳が捉えた音。その正体を確かめようと、目を凝らして。
一瞬の躊躇の後、彼は走り出した。




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