女神降臨


「メイリン?!」

驚き、焦り、ヴィーノとヨウランはメイリンを追う。
デッキにたどり着いたとき、彼女はそこから身を乗り出していた。

「待て、メイリン!! 危ないって!!」
「そうだよ! 今、艦長が行くって――」
「だめよ、そんなの!!」

メイリンが吼える。その迫力に、二人の足は止まった。

「艦長は、船の『命』なのよ?! 降りちゃだめ。船とクルーを守り、指揮するのが一番の仕事なんだから、絶対だめ!!」
『――!!』


言葉が出ない。
メイリンの考えに、ヨウランもヴィーノも賛成だ。艦長は、船を守るべきだと思っている。
けど、

「けど、メイリンが行くことない! 行くなら俺が――」
「ヴィーノは、ミネルバの修理があるじゃない」

メイリンが言う。
そう。ここでこんな風に押し問答をしている暇は無い。ヴィーノも、ヨウランも、早く補修作業に向かわなくちゃいけないのだから。

「そりゃ、私じゃ頼りないかもしれないけど……でも、ミネルバにいても、何も出来ないし。やっぱり、私が行くのが一番良いよ」


そして、ちらりと下を確認する。ミネルバの下にあるのは、ついさっきまでこの船を攻撃してくれていた砲台。すでに沈黙し、動く気配の無い鉄の板達。
鉄筋は床を貫き、下層部への道を作ってくれている。
あそこを伝えば――下に向かえる。
道を見つけ、再度、メイリンは二人に訴えた。


「私さ、思うんだ。アスランさんと再会して、ミネルバに連れて来て……それが、私の役目だと思ったの。もし今日、私が誰かの役に立つのなら、それはこれなんだ、って。でも、違った。私の役目は『ここ』にあったのよ。
これが、私の『運命』なんだよ」



足が震える。
本当は、とても怖い。
でも、今この場で、ミネルバにいなくても支障の無い人間は、自分だけだ。
クルーではない、自分だけ。



「大丈夫。さっきの見取り図で、場所は覚えたし。機械操作なら、得意だし」


メイリンは、笑っていた。笑って、二人を安心させようとした。
それがどれほど、無謀なことでも。
これが自分に課せられた使命だと信じて。


「二人は、一刻も早くミネルバを直して。お願い」


そして、メイリンは飛び出した。
デッキから、下へ。不時着したため、かなり破損している砲台の上に飛び降りる。


「――メイリン!!」
「行ってくるね!」


二人が砲台を見下ろすと、メイリンが笑顔で手を振っていた。
手を振って、亀裂から下方へと進んでいった。



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