君のための正義





『?!』

互いに向かい、突き進むフリーダムとジャスティス――その戦いを邪魔するように、一機のMSが、二機の間を下りていった。
細々とつけられたパーツが判断に時間をかけさせるが、造形的には、ザク。

「改良機……?」
《ローズシリーズか?!》

キラの耳に、聞きなれない単語が飛んでくる。
ローズシリーズと呼ばれたザクは、ある程度下降した後、再び二機向かって上昇してくる。
正確には、ジャスティスに。

グランは反射的にエルザへと戦闘態勢をとる。すると今度は、少しだけ開いた隙を、キラが攻めに入る。
通信があるわけでも無い。事前の打ち合わせなど何も無いが、分かる。
アレに乗ってるのがアスランで、彼が一体、どんな動きをしたいのか。

キラの思い描くシルエットと、実際にエルザが取る動きが重なっていく。


「……これは、また……」

呻くグランから冷や汗が流れる。ここまではフリーダムとザフト機を相手に、そこそこ互角か、それに近い形で刃を裁いてきた。しかしどうだろう。エルザが――アスランが加わった瞬間、戦況は一変した。
フリーダムとの連携が、あまりにも合いすぎて。
まるで、同じ翼のように。



〈すまない、ジャスティス……〉



アスランは嘆く。
前大戦を共に戦った愛機。この未来にたどり着くために、一緒に力を振るってくれた歴戦の勇士の姿を、彼は瞳に焼き付ける。
決意の眼差しで、アスランはジャスティスを見た。
そう、彼は覚悟を決めた。
ジャスティスを、破壊する覚悟を。

「っ……こんな、所で……やられてたまるかあああああっ!!」


グランが吼える。
キラとアスランにしか届かない、グランの叫びを聞きながら、二機は旋回した。
続いて、フリーダムがジャスティスに突撃する。グランはそれをギリギリで避け、反撃を試みた。



冷静な判断力が欠けていた。



珍しく追い詰められたグランは、突っ込んできたフリーダムをどうにかすることで、頭が一杯になってしまった。
ゆえに、フリーダムの背後から飛び出すように現れたレベッカに対し、的確な対応が取れなくなる。


「俺の出る幕……無さそうだな」


キラとアスランの連携を前に、この戦闘に自分は不要と判断して、コズマ・ウーレスは身を翻す。
苦戦する別の仲間の元へ。
背後から大きな爆発が響き渡ったのは、秒針が三回ほど進んだ後のことだった。






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