贖罪の唄 時が凍りつく。 冗談? いや、そんな空気では無い。 この悲しみは、冗談で出せるものではない。 「娘の婚約者は、戦争で命を奪われた」 「……だからって……」 「頼むんだよ。もし『彼』が生きてたら、アスランの釈放に……いや、アスランだけじゃない。ラクス・クラインも助けたいと願ったと。 『彼』はアスランを兄のように慕っていた。ラクス・クラインを尊敬していた。だから……助けてくれと。もし釈放されれば、彼は必ず、私の力になってくれると……」 まるで懐かしむように。 「分かっているさ。私のやっていることは、決して許されることじゃない。この一件が片付けば、しっかり身を引く」 彼もまた、大きな決意で行動していた。 並大抵の覚悟ではなく。 これまで築いてきた『評議員』人生を賭けていた。 「だが、それだけの価値はあった。やはり、私は『彼』で良かったと思うよ」 「……本当に、そう、思っているのか……?」 「彼は、しっかり役目を果たしてくれた。組織が骨抜きになり、崩壊寸前のザフトを支えたのは、間違いなく彼の力だ」 クルゾフはしっかり見ている。 裏で、アスランの存在が大きかったことを。 新体制の『議会』と『旧体制』を続けるザフト。衝突しやすい二つの勢力の潤滑剤の役割を、彼はしっかり果たしていた。 「……カルネア。もう少しだけ、力を貸してくれないか?」 「仕方の無い男だな、本当に」 はあ、と大きなため息をついて。 「同期のよしみだ。骨だけは拾ってやる」 「助かるよ」 NEXT>>>PHASE13−君のための正義 |