贖罪の唄






「まったく……無理言ってくれるねえ。ラクス嬢も、議長代理殿も」
「え? アスランと話してたんじゃないの?」
「途中から代わられた」

乱暴に携帯を切ると、ディアッカはおびただしい数のキーパッドと向き合った。
我ながら、よく、アスランが途中から自分を無視し始めたにもかかわらず、携帯を切らなかったと思う。おかげで向こうでどんなやり取りが行われていたのかも分かったし、ラクスやクルゾフとの連携も取れる形になった。


「で、どうなるの? 審議」
「続行だって」
「ぞっ……って、本気?!」
「本気も本気。やる気満々だぜ? あの二人」

まるで他人事のように、ディアッカは言い続ける。

「なんかもう、議長代理は暗殺情報掴んでたみてぇ。特殊部隊とか、秘密裏に配置してるってさ。万が一、犯人側に動く気配が出たら、その時は部隊が動くってよ」
「……分かってるのに、逮捕しないの?」
「とりあえず放置。まあ、こっちからの映像でも、奴らを監視してくれって言われた」

完全に、彼に従って良いのか分からない。
でも、クルゾフと直接話して、直接「何を目的」として、この「審議」を執り行うのか聞かされたディアッカには、従わない理由も無かった。
もし本当に、それが目的なら……大いに有効な手段だ。
だがミリアリアは、怪訝な顔を崩せない。

「……いいの? それ」

下手したら、ラクスの命が奪われるかもしれないのに。
だがディアッカは、目を細め、モニタに映るラクスを見て、

「本人が『撃たせない』って言ってるんだ。俺達は、歌姫の援護をするしかないんだよ」

言いながら機械を操作し、パネルに次々と赤い色を点灯させていく。

「これは、何?」
「んー? 広域用通信干渉……簡単に言えば、電波ジャックかな?」
「電波……ジャックぅ?!」

思わぬ言葉の出現に、ミリアリアは声をひっくり返してしまう。

「電波ジャックって、ねえ! ジャックって、誰がやれって――」
「議長代理」
「国のお偉いさんが、何でそんなことディアッカにやらせるのよ!!」
「いや、プラントを走る電波は、もうすぐジャックされる手はずになってるんだって。だけどそれは、宇宙には届かないから。俺は宇宙担当」
「はあ?!」

言ってる意味が分からない。
なんでここで、電波ジャック??
ディアッカの胸倉を掴み、問いただしてやろうか――なんて、強行的な考えが頭を過ぎった時だった。



スピーカーから、一筋の歌声が届いた。






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