運命の再会 同じ頃、深い闇の海を航行するシャトルの中に、キラはいた。 そこはオーブ政府専用の、要人シャトルで、彼の前の席には、オーブの議員が数人ほど座っている。 オーブ・プラント間で行われる技術干渉――キラは、オーブの使節団代表という立場にいた。 「あと少し、かな……」 時計に目を落とし、背もたれへともたれかかり、大きくため息をつく。 大丈夫。大丈夫。 彼らは、データの搬送方法を知らない。 先回りされる心配は、無い。 自分を安心させるよう、大きく深呼吸をして。 「なぁに緊張してんだ? キラ」 「ムゥさん……」 そんなキラに声をかけるのは、ムゥ。キラの後ろから顔を覗かせるムゥの隣には、マリューの姿もあった。二人は政府とは何ら関係ないが、プラントに行く用事があるというので、同乗する事になったのだ。 「お前一人で重要な交渉しようって腹じゃねーんだ。ほら、もっと気ィ抜けって」 「……はい」 出来るだけ心配かけまいと、キラは笑顔を作り上げる。それがまた、マリューの疑心に火をつけた。 「……ねえ、キラ君。何か心配事でもあるんじゃない?」 「……いえ、大丈夫です。大丈夫……上手くいきます」 ムゥもマリューも知らないこと。 ミリアリアが捕まり、それと引き換えに、軍事データを要求されていること。 そして、そのデータは……キラの手には、無い。 「キラ様!!」 そんな時、一人の政務官が、真っ青な顔でキラの元へと走ってきた。 「大変なことになりましたぞ……!」 ただならぬ様相は、キラに、最悪な結末を予感させた。 「しっかし本当に、色んなところにカメラ仕掛けてんな。よくここまで手の込んだことを……」 画面を見据えるディアッカは、わずか五分で機械の仕組みを理解し、色んな映像を画面に映し出させた。 プラント、地球、そして自分の会社の中までも、カメラは仕掛けられている。 内も外も、全てを監視するように。 「ねえ、この映像……さっきの格納庫?」 「ぴんぽーん」 楽観的に画面を変えていくディアッカは、その映像を、ミリアリアも見たことのある景色で広げていった。 「ねえ、何してるの?」 「会長様を探してんの」 これだけのカメラを仕掛けているなら、どこかしらで姿を捉えられるはずだ、と考えて。 見る見る内に、画面は倉庫の映像で一杯になる。 しかし、 「……いない?」 ディアッカはくまなくモニタを見回った。 しかし、どこにも姿が無い。 見つけられない。 「会長はもう、この敷地内にはいないってこと?」 「……にしたって……どこ行ったって言うんだよ……」 昨夜から、この倉庫は、そしてカンパニーは見張られていた。 どのタイミングで、どこに行ったのか。 「……ドゴラのアジトにでも行ったのかしら……」 「ったく、ごちゃごちゃ動きまくってくれてよお……」 呻きながら、ディアッカは探す。 ひたすら画面を切り替えること数分――ようやくモニタが、ライドンの姿を捉えた。 そこは、もちろんこの倉庫ではなく。 「……え?」 画面右端に表示される、映像元を示す名前を見て、ミリアリアは顔をしかめる。 そして、ディアッカは別のことを考えていた。 「そういえば……ヤナックの姿も無かったな……」 ディアッカの心に、一抹の不安が過ぎった。 |