運命の再会





どれだけそうしていただろう。ミリアリアの頭を優しく撫でるディアッカは、気配で辺りを探り始めた。
明かりが無くとも目は既に慣れ、どんな部屋なのか分かる状態になっている。
正面の壁は全てモニタになっていて、巨大なコントロールパネルが広がる姿は、管制室を思い出させる。
冷たい室内が、背筋に寒気を走らせた。

「……ここ、何なの……?」

ディアッカの思いを代弁するかのように、ミリアリアが呟く。
呟いて――我に返ったのだろう。彼女はディアッカから離れようとした――ものの、それはディアッカの力に阻まれた。
彼は断固として、ミリアリアを離そうとしない。

「……ちょっと。いつまで抱きついてるのよ!」
「良いじゃん。別に。いつまで抱きついてても」
「はーなーしーてーよーっ!」

胴を叩いたり押し戻そうとしたり、挙句足をけってみたりするが、やっぱりディアッカは、微動だにすることも無く、

「やだ。こんな機会、滅多にねーもん」

逆に腕に力を込めてくれる。

「こんなことしてる場合じゃないでしょ! ほら! 私達、追われてるんだし!!」
「つーか、こーゆー方向に持ってきたの、お前じゃんか。俺は悪くねえ」
「良い悪いの問題じゃなくて!」
「大丈夫。こーしてても、ちゃんと機会起動できるし」

言いながら、ディアッカはミリアリアを抱えたまま、モニタの前へ移動する。

「起動?! そんなことしないで、おとなしく――」
「おとなしくしてても、どうにもなんないだろ?」

にんまり笑って、電源っぽいボタンを押し込む。
瞬間、暗い部屋が明るくなった。まるで電気がついたような錯覚に落ちるほどの大量の電気が、二人の目に襲いかかる。
あまりの眩しさに、ディアッカも、そしてミリアリアも目をそむけ――


「――んだよ、これっ!!」
「なんで!!」


瞳の端に現れた映像が、二人の視界をモニタに戻させた。
何十分割にもされたモニタ群に映るのは数え切れないほど沢山の風景で、二人は別々のモニタを食い入るように見てしまう。


ディアッカが見るモニタに映るのは、ザフトのMS収納庫。
ミリアリアが見るモニタに映るのは、オーブ官邸。カガリやキサカの姿もある。


小さなモニタの一つ一つが、世界の政治・経済の要所を捉え、映していた。

「これ……音も拾えたりするのか……?」

言って、キーを適当に叩いてみる。すると、横のスピーカーから、カガリとキサカの話し声が流れ始めた。

「そっか……だからあの人、私のこと知ってたのね……」

この部屋の存在が、ミリアリアの中で、一つの謎を解明させてくれた。
それは、ライドンが何故、彼女を知っていたのか。彼女はこの部屋に入ったことがある。また、プラントへ行くことは電話連絡だったが、その電話はこの部屋のものを使ってのことだ。
つまり――

「ここに映ってることは、全部、こちら側に筒抜けってことね?」
「だな」

寒いものが、体中を駆け巡る。これでは、秘密も何もあったものじゃない。
と、その時。


《ところでカガリ……例の資料、大丈夫なのか?》
《今はまだ、こちら側にある。心配は無い》
《……ミリアリア・ハウは、どうする気だ?》
『?!』


突然ミリアリアの名が出、二人は驚き、画面を注視した。
そこには、苦痛に顔をゆがめるカガリの姿が映し出されている。


《ミリアリアは……助け出す》
《しかし、どうやって? プラント側も手を焼いてる相手だぞ?》
《ミリアリアも助けるし、データも渡さない。これ以外の選択肢は無い!》


そう宣言するカガリを見ながら、ミリアリアは首を傾げる。

「……データ?」
「そういやイザークが、今度プラントとオーブの間で技術干渉を行うとかなんとか……」
「何ソレ」
「お互いの軍事技術を提供しあい、相互の認識を深める――……簡単に言っちまえば、手の内の明かし合いだな」
「よくそこまで話が進んだわね」
「だよなあ。びっくりだぜ」

感心するミリアリアに、ディアッカもまた、人事のように呟く。

「確か……もう、オーブから使者がこっちに向かってるとかって話だぜ? 数日の内には始まっちまうんじゃねーか?」





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