運命の再会



まだ、思い出すのも辛い一幕。
あれは、とても寒い日の出来事だった。





――あんたと一緒に、いられない――





確か、そんな言葉から始まった気がする。
仲間から友人へ。そして恋人に昇格できる――そうディアッカが感じ始めた矢先の宣告だった。



ある日、ミリアリアの苦しみが、爆発した。



戦争が終わり、争いの無い生活を手に入れ、トールを失った悲しみが爆発した。
慌しい中で薄れていた苦しみが。

考える時間を手に入れたことで、襲い掛かってくる虚無の悲しみ。
嘆き。
憤り。
こんな状態で、ディアッカと一緒になんていられない。
だから。
だから……





「頃合見計らって、連絡の一つくらいよこしなさいよ!!」
「んなもん、言われねーと分からんわ!!」
「あんた、私のこと好きだったんでしょ?! なら、それくらい見抜いてよ!!」
「ちょっと待て! こっちは惚れた女に『一緒にいられない』だの『私のことは忘れて』だの『もう二度と会うことは無い』だの、散々言われまくってんだぞ? 傷心の人間に、そこまで寛大な心を求めんな!」
「それくらい言った方が、あんた、意地になると思ったんだもん! それが何よ! こんな所で偶然バッタリ再会なんて……どんな顔すれば良いのよ! もう、最悪!!」


変なテンションのまま、二人は叫びあっていた。
敵陣であることも忘れ、邪魔が入らないのを良いことに、ひたすら思いの丈をぶつけ合う。


「ザフトになんか戻らないで、傍にいてほしかった」



あの時は、決して言えなかったこと。
トールのことばかり考えているから、ディアッカを遠ざけたのに。
けど本当は。
何だかんだと言いながら。
支えてほしかった。


大切な人を失った悲しみに押し潰されそうだからこそ、とても大事な人となったディアッカに。


「傍で……抱きしめててほしかった」
「……ほんと、お前……素直じゃねーよな」
「わるか――」



――ぎゅっ。
悪態は、最後まで放たれない。
ディアッカに抱きしめられて。


その身を――包まれて。



「ディアッ……?!」
「――ごめん」

右手に頭を、左腕に身体を絡めとられ、ミリアリアは身動きがとれなくなる。
そんな彼女に届く言葉。


「ごめん。全然、気付けなくて」


それは、ディアッカの後悔。


「全然……そこまで考える余裕、無かった」
「私こそ…………ごめん……な、さい……」


久しぶりの温もりが、ポロポロと、ミリアリアに嘆かせる。
ポロポロと、涙を零させる。


「ごめん、ディアッカ……」


傷つけて。
悲しませて。
ごめんなさい――


ミリアリアはゆっくりと、ディアッカの背中に腕を回した。





*前次#
戻る0

- 89 /189-