よく似ていた。
彼の瞳は、ある時期のある人物によく似ていた。
[コーディネーター]に大切な人を奪われて、別の[コーディネーター]に恨みをぶつけた、ある人物によく似ていた。
だから――止めたかった。
彼も、彼の妹も――……



「伝わってないかもしれない」



ディアッカが呟く。

「お前の気持ち……お前が何を思って、どうして止めようとしたとか……いや、きっと、全然伝わって無いだろうけど……」

静かに、ミリアリアに目を向ける。気配でそれに気づいたミリアリアもまた、ディアッカを瞳に映した。
優しい夜風の吹く海岸で、彼は囁く。


「でも、お前にとって大切なのは、そこじゃないんだろ?」


そう、大切なのは、彼女の気持ちが伝わることじゃない。
大切なのは――気付く事。
自分がどれだけ悲しく、辛く、許されないことをしようとしているか、どれほどの新たな「悲しみ」を生もうとしているのか……感じること。

その本質にたどり着けば、おのずと伝わる。
どうしてみんなが必死だったのか、彼らは知ることになる。
その時、改めて彼が、自分の意思を暴力で片付けようとするなら――……戦うまでだ。
分かってもらえるまで。
どれだけ時間がかかるか、分からないけれど。

「だから、考え込むなよ」
「あら、ミリアリアさんてば、何か悩み事でもあるの?」

ディアッカがミリアリアの肩に手を置いたまさにその時、背後から突然会話に乱入する女性が現れた。

「……あのよ、シホ」
「何かしら?」
「思いっきり邪魔なんだけど」
「ああ良かった。折角隊長の横を離れてまで邪魔しに来たのに、お邪魔虫にならなかったら、来損も良いところだわ」

にっこり笑いながら現れたお邪魔虫・シホは、無理矢理ディアッカとミリアリアの間に割り込み、これまた無理矢理居座り始める。

「……キツイ」
「じゃ、貴方がどきなさい、ディアッカ。私、ミリアリアさんと大切なお話があるんだから」
「私に……話?」
「ええ。この馬鹿を隊長から遠ざける方法と、このお邪魔虫の致命的弱点を知りたくて。困ってるのよ、いつも私と隊長の愛の時間を邪魔してくれて……しかも、もう少しで隊長とお近づきになれるって場面で出てくるから、ホント性質悪くて」

彼女は、真剣だった。
大真面目に、ミリアリアに尋ねている。


ディアッカの彼女にも関わらず、本人の悪口を叩きつけながら。


「ディアッカの弱点と言われても……」

しかも本人、悪口を諫めることも無く。



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