何も。


言葉が見つからない。


自分が目指した世界。
それは、自分達の害となるコーディネーターのいない世界。


では、その『自分達』とは?


瞳を動かす。視界に入るのは、この作戦に賛同してくれた仲間たち。
父・グラムハ。
そして――ネサラ。


たった一人の妹。


「家族を殺すなんて……そんな悲しいこと、しないでくれ……」
「……俺は――」
「――私は、」

アルゾートが何らかの否定の意を示そうとした瞬間、彼の言葉は、ネサラの声にかき消された。
ある種の決意を秘めたネサラに。

「私は、誰にも殺されない」
「ネサラ……」
「ごめん、兄さん……私、足引っ張っちゃってるね。兄さんの決断を鈍らせてる」

切なく微笑むと、ネサラは押さえつけられる腕の力を一瞬、抜いた。
突然抵抗が無くなり、サイも手の力を少し抜く。
その瞬間――彼女は一気に肘を押し込んだ。

サイの、わき腹めがけて――


「ッ痛――!!」


あまりの痛みに、サイは腕を離し、膝を床につけてしまう。

「大丈夫? サイ!」
「俺より――」

わき腹を押さえるサイは、駆け寄ろうとしたキラを牽制した。
目で、伝える。
自分よりも向こう――ネサラの動向を優先しろ、と。
サイの呪縛を抜けたネサラは、部屋の中に走り、一丁の拳銃を手にしていた。

それは、兄・アルゾートが使っていた物。
彼が、シホにより手から離され、床に転がったままになったのを放置せざるを得なくなったもの。

誰もがネサラに向かおうとしたが、銃を手にした瞬間、足を止める。
むやみやたらには動けない。
こちらに向けられたら――……と思った矢先、彼女は彼らの考える行動とは、真逆の動きを見せはじめた。


ネサラが銃口を向けたのは、自分の頭。
こめかみ部分。




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