「な――!! ちょっと、いきなり何――」
「ん? 怖がってるから、少し気を落ち着けさせようと思って」
「こんなので、落ち着くわけないでしょ!」
「〜〜貴様ら、少し黙れ!!」

煩すぎたおかげで、イザークから罵声が飛ぶ。
正しすぎる正論を前に、ミリアリアはおでこを両手で押さえたまま、何も言えなくなり――……かと思えばディアッカは、彼女がいつもの調子を取り戻したことで軽い安堵感を抱き、そのまま口笛なんか吹きながら、時計へと歩いていく。
目当ては、その真下にある棚。
ちらっと背後を確認すれば、平静を装うアルゾートと、動揺を隠し切れないネサラの姿。


「どーやら、ビンゴみてーだな」


棚を開ける。
手前にある備品類を取り出す。
不自然に手前にある板を押す。
すると――とてつもなく物騒な代物が、姿を現した。

金属の箱。

響く音が、時限式の装置が導入されていることを示す。
見つけたからには解体しなくては――と、ディアッカは蓋を開け、そして――固まってしまった。

「何をしている? 早く――」

ディアッカの背後から、イザークとアスランも、棚の中を覗き込む。
安置される、爆弾兵器を。
それは時限式の物だった。
彼らもまた、起爆装置の内部を確かめ、ディアッカ同様言葉を失う。

軍事訓練の一環で、爆弾処理の授業は受けた。大抵のものなら、彼らにも解体できるだろう。


しかし――こんな形状、見た事が無い。


「アスラン、いけるか?」
「……難しいな……」
「イザークは?」
「こんな面倒なもの、解体できるとしたら――……」

そこで、イザークの声が途切れた。
二人が音を上げるほど、入り組んだ造りとなっている起爆装置。
これをさばける者は……と考えたイザークの、アスランの、そしてディアッカの脳裏に、一人の少年が蘇った。



一人、いる。
彼なら、きっと解体できるだろう。
けど……彼は、ここにいない。



この世にも、いない。


三人と共に同じ「クルーゼ隊」に属し、いつも笑顔を振り撒いていた彼の少年は……先の大戦で命を落としてしまった。


「……いない者を当てにも出来んだろ」


吹っ切るよう、イザークが立ち上がる。

「シホ。爆処理の実務経験は?」
「残念ながら」
「キラ・ヤマトは?」
「難しいと思う……」
「となると、手は一つだな」

最後の希望だったキラとシホも駄目と分かるや、イザークは高々に言い放った。


「こちら側に解体できる者がいない以上、製造者の口を割らせるしかないだろう」


その目は、しっかりとアルゾートを捉えていた。




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