「だから、言うこと無いわ、兄さん」

アルゾートを援護するよう、彼女は続ける。

「黙っていれば、全部、終わるのよ」
「ネサラ……? 何を……」
「父さんもカガリ様も、嫌い! みんな、みんな嫌い!! こんな世界、一度消えてしまった方が良いのよ!」

ヒステリックに、ネサラは叫んだ。
一方、


〈黙っていれば、全部終わる――?〉


彼女の言葉に、誰もが別の道筋を生み出していた。
すなわち、爆弾の所在と起爆方法。一つ目はアルゾートのスイッチで爆発した。だから、誰も起爆式であることに疑問を持っていなかったが……


彼らは、なぜここに来た?
なぜ、マルキオだけを別室に移動させた?
この場に関係者が集まるよう仕向けて――


「まさか……」


我知らず、ディアッカの口が動く。
悲劇のヒーローを象ろうとしたアルゾート達の、曲がらない意思と少しだけ恐怖に震える肩。


〈爆弾は――この部屋にある?!〉


その答えにたどり着いた瞬間、ディアッカの裾が引かれた。

「……ねえ、ディアッカ……」

つい、とミリアリアの手によって。

「さっきから……変な音、してるんだけど……」
「変な音?」
「ほら……耳、澄ましてみて……」


コーディネーターのディアッカに聞こえない音を、ナチュラルのミリアリアが捉える。


元々、コーディネーターの方が身体能力は高い。しかも、方や軍事訓練を受け、方や民間人上がりの元CIC。ありえないような話だが――ディアッカは無碍に切り捨てず、音を見つけ出そうと、意識をアルゾートから離した。

刹那、小さく響く金属の音を見つける。
時計の音――……いや、時計に間違いないだろうが、備え付けの壁時計の音と重なるように、もう一音。


なぜ今まで気付かなかったのだろう。
ミリアリア達なら分かる。簡単に気付けるほど、分かりやすいズレ方ではない。
ただ、自分達は……爆弾という情報があって、いざ探してみれば、こうやって簡単に異質な音にたどり着けるというのに、言われて初めて気がついて……

「もしかして……この音……」

ミリアリアは、ディアッカの袖にしがみ付きながら、ひどく不安げな表情を見せる。
怯えた瞳に、ディアッカも苦しそうな顔を作り――

「……こりゃ、ナイト失格だな」
「ナイト?」
「お前を守るナイト様」

瞬間――ディアッカは、ミリアリアの額に口を近づけた。


小さく、ちゅッと音を鳴らして。




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