「観念しろ、アルゾート」 一歩、グラムハも歩み寄る。 「もう、お前の負けだ、アルゾート。早く爆弾の場所と……導師様の所在を明かせ!」 そう、爆弾も脅威そのものなのだが、それ以上にマルキオが。 ……彼らは今、マルキオ導師を盾に取られた状態なのだ。 「導師……ね」 その名を出され、彼は手中に収めるものが、最強の切り札になることに気がついた。 「導師に何かあったら……問題は大きくなる、か」 「アルゾート?! お前――」 「安心しろ。あの人は、このホテルのどこかでお休み中だ。……そうだ、こういう話はどうだ? 俺たちを解放する。その代わり、導師の居場所を教える。良い取引だと思うが……」 「却下ね」 言い放つは、シホ。 「すでにこのホテルは、当局の統治下に置かれたと言っても過言じゃない状況よ? 内部にいるなら、遠からず発見されるわ」 「なら、最後の爆弾の場所を教える、というのは?」 提示されるもう一つの条件にも、強気を貫いたシホも黙り込む。 「もしかしたら……導師の傍に爆弾があるかもしれないぞ?」 「――それは無いな」 アルゾートの挑発に、今度はアスランが待ったをかけた。 「君達は……マルキオ導師を『避難』させたんじゃないのか? あの方にやってもらうべきことがあって、万が一にも爆発に巻き込まれないように。だから、誘い出してどこかに閉じ込めた」 「名前だけで、大きな力を動かせる人だからな、あの人」 ディアッカも続く。 まさに彼は、地球に『平和』をもたらした、影の尽力者なのだから。 「……お前は、導師を『とって食いはしない』と言った。あれは……本心だな?」 半分、そうであると願いながら、グラムハが呟く。 願いがある。 どうかこれ以上、人の道に反することをしないでくれ、と。 だから、早く、仕掛けた兵器の在処を明かしてほしくて。 けど、アルゾートは口を噤んだまま。 俯き、考え……意思を強く持とうとする姿に、とうとうシホが痺れを切らした。 「いい加減にしてよ。もう、あんたは投降するしか道は無いの。ここで盛大な花火を打ち上げたとしても、あんたらはただの爆弾魔よ? どんな崇高な思想があるかは知らないけど、伝える人間がいなきゃ、いい様に使われるだけって、どうして分からないのかしら。それでも、馬鹿げた道を選ぶ?」 「他に、仲間がいるとは考えないのか?」 「残念ながら、ホテルに来てない連中は全員捕獲済みよ。彼らから、根掘り葉掘り聞かせてもらったわ」 自信満々のシホ。 そこにイザークが、訝しげな症状で加わった。 「確かに、残党勢力は俺達で片付けた……が、あれは地元警察に任せたはずだが?」 「隊長を探している内に、現場にたどり着いてしまって。それで少々介入させていただきました。 にっこり笑い、現状報告をするシホは――なんだか少し、怖い空気を放っていて。 「どうするの? まだ抵抗する? なら、あんたが導師を盾に取ったように、こっちも仲間を盾に取らせてもらうわよ?」 「それこそ残念な話だが、俺達はとっくに、死ぬ覚悟は出来ている。だから、この場に居る連中も、俺の話に乗ってきたんだ。誰も――」 「――眼鏡君、彼女連れてきて」 アルゾートの言葉を打ち消し、シホが仲間を呼ぶ。 すると、声に呼応するかのごとく、一人の少年が、女性と共に姿を見せた。 「"眼鏡君"はやめてって言ってるのに……」 ぶつぶつと文句を言いながら。 それは、誰もが驚いた人物―― 「ネセラ!!」 「――サイ?!」 戸口に現れた二人の姿に、アルゾートと――そしてキラが、声を上げた。 |