責め立てるような口振りが苦しかったのか、悲しそうな瞳で、ディアッカを見上げている。 「この人、分かってるから……ちゃんと、分かってるから」 「分かってねえよ」 「分かってるよ」 彼女に断言され、ディアッカは言葉を呑む。 「分かってるの。分かってるけど……心がついて来てないだけよ。自分の事も考えられなくなるほど……」 言ってミリアリアは目を伏せた。 もしかしたら……トールが亡くなった瞬間を、思い出してるのかもしれない。 「だから、ディアッカ。もう少し――」 「――黙れ」 カチン。 小さな金属音が響く。 それは、銃口に弾が転送された音。 引き金をひくだけで、凶器と化す武器が出来上がった音。 青年の手には――おそらくジャケットの下に隠していたであろう拳銃が握られていた。 発射口は、ミリアリアに向けられている。 「……何だよ、それ」 青年とミリアリアの間に身体を割り込ませ、ディアッカ。 「こいつは……お前を擁護したんじゃねーか」 「擁護、だと? お前に何が分かるってんだ!」 叫ぶ青年の顔は、歪み引きつっていた。 怒りに。 恐怖に。 負の感情に支配された心が下した決断は…… 「何も……何も知らないくせに、知った風な口をきくなあああああっ!!」 「いけないっ……逃げて!」 ラクスの顔が歪む。 イザークが。 キラが。 カガリが。 ディアッカが。 誰もが戦闘態勢に入った瞬間―― パンッ!! 部屋に響くのは、乾いた音。 それと――もう一つ。 「あんた、見苦しすぎよ」 それは、ホテルの前にいた少女。 こげ茶の髪を、腰元で結わえた少女。 「……何であいつまで、こんなとこに来てんだよ……」 ミリアリアを庇い、彼女を抱きしめながら、ディアッカは呟いた。 「シホの奴……」 |