レテトニアホテル・三階の一室。
マルキオの部屋は、とてつもない緊迫感に満ちていた。
迷いを吹き飛ばすためとも思える、アルゾートの凶行――それは、直前まで同じ意志の傘下にいたクルガを筆頭に、彼の仲間たちさえも驚くもので。

「アルゾート……」
「どうせ吹き飛ぶんだ。同じだろう? 何時爆発しようが」
「何が同じだ! 人の命が関わることだぞ!!」
「ああ、そうだなあ……」

イザークが吼えるも、アルゾートは気にした素振りを全く見せない。
それどころか、

「どうする? 爆弾、一つじゃないぞ?」
『――――』

アルゾートの挑発に、全員が息を呑んだ。
彼の手の中に、起爆装置が眠っている。つまり、爆発させようと思えば、今すぐにでも全て始動させられる状態であり……


〈そんな……〉


自分の置かれている状況を把握して、ミリアリアは、肩を竦めてしまった。
怖い。
けど……怖がってなどいられない。

大丈夫。
大丈夫だから、落ち着いて。
こんな状態で……「敵」に弱味を見せちゃいけない。
キッ、とリーダー格の青年を視界に置いて――


「大丈夫。心配すんなって」


震えを抑えようとする肩を、ディアッカが抱き寄せた。
落ち着かせるようポンポンと叩いて、こつんと頭を合わせてきて。

「ま、なるようになるさ」

ディアッカの存在は、いとも簡単に、ミリアリアを安心させてくれた。
そして彼は、アルゾートに視線を投げる。
強いつよい、意思の込められた瞳を。


それは――大事な人間を守るために――


「なあ、言っちまえよ、爆弾の場所。お前だって、死にたくねーだろ?」
「死なんか恐れて、こんなこと出来るか……」

変な刺激を与えないよう、静かに、落ち着いて説得を試みたディアッカだったが、アルゾートの態度は変わらなかった。
「死」という言葉に、一瞬身体を震わせたのに、何でもないよう取り繕って。
彼の姿は、ディアッカに、軽い苛立ちを与えた。

「へえ……じゃ、コーディネーターを排除するためには、関係ないナチュラルも巻き込むのか。矛盾してるねえ」
「……んだと?!」
「同胞の仇をとるために、同胞を手にかける。どこが矛盾して無いんだよ。それに、お姫さんはお前にとって、大事な人間なんだろ?」
「それがどうした!」
「大事な人間犠牲にしてまで、やり遂げなくちゃならねー事なのかって訊いてんだよ」

と、吐き捨てた時だった。


「……ディアッカ、やめて……」


ディアッカの袖を引き、ミリアリアが嘆いた。




*前次#
戻る0

- 24 /44-