「コーディネーター相手に、そう簡単に降参すると思うのか?」
「……そんなにコーディネーターが憎いか?」

呆れ、アスランが呻く。
こんな状況になっても、まだ強がりを見せるアルゾートに、本気で呆れている。
そしてアルゾートも、はっきり答えた。

「憎いさ。憎いに決まってるだろ!」
「あのさあ……さっきから聞いてりゃ、コーディネーターが憎い憎い言ってっけど、お前は憎まれる覚悟、持ってるわけ?」
「……なんだと?」

呆れ声はアスランだけではなく、ディアッカからも響いてくる。

「だってそうだろ? 島に津波災害を引き起こさせたのはコーディネーターだから、コーディネーター全員が憎いってんなら、こっちだって、ナチュラルだから憎いって道理が通じても良いってことだろ? ほら、俺ら、ナチュラルを憎む理由は星の数ほどあるから」

呆れる、というよりも――非難。
あっさり言うディアッカだが、その言葉の中には、途方も無い苦しみと悲しみが隠されている。
それは非常に重く、非常に悲しく、非常に苦しい話だ。

彼ら「反政府組織」がコーディネーターを憎むのが許されるのなら。
……例えば「血のヴァレンタイン」の被害者に、自分達が憎まれるのも許されることだと。

クルガも、造反員達も、ディアッカの言葉に迷いを覚える。
気づいたのだ。全ては、自分達に返ってくる問題だと。
全てが巡ってしまう。ここで彼らを傷つけて、彼らが自分達を傷つけようとして、そしてまた傷つけて……そんな世界に終わりは来ないと、いきなり気付かされてしまった。
けど、気付いたところで、どうにもならない。


こんなにあっさり、来るべき現実を晒されても、心はついてこない。


特に、今、迷いを吹き飛ばしたばかりのアルゾートには。


「……だから、なんだって言うんだ」

否定したくても、どう否定して良いか分からないから、言葉よりも手が出てしまう。
反論できない所から、暴力は簡単に生まれてしまう。
それでも自分達は正しいと、主張したいから――

「俺達は正しい!!」

叫び、彼は行動した。
袖口から、何やらスイッチのようなものを飛び出させ、ボタンを押し――



ごうんっ!!



刹那、下の階から爆発音が轟いた。




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