島をまとめる者と、島に造反する者が、血縁関係……なんという皮肉か。


「もうやめてくれ、アルー。こんな事をして何になるんだ。な? 言いたいことがあるなら――」
「言ってどうなる?」

アルゾートの冷たい視線が、カガリを貫く。

「俺達が反対したら、プラントとの縁を切るか? 切れるか?」
「……それは、ない」
「だろう? 無駄だと分かっていることを、やる必要がどこにある?」
「……プラントを拒絶して……それでどうなる?」
「コーディネーターのいない世界が出来上がる。これほど素晴らしいことは無いんじゃないか?」
「それは、素晴らしい世界とは言わない」

同意を求めるアルゾートを、カガリはきっぱり否定する。

「それはただの差別世界だ。素晴らしいと言われてたまるか!」
「じゃあお前は、コーディネーターを許すって言うのか?!」
「許す許さないの問題じゃないだろう!」

息子の言葉に、黙っていることが出来なくなったのだろう――たまらずグラムハも話に介入した。
ラクスとミリアリアは、事の成り行きを見守っている。参加したいのは山々だが、武装勢力に囲まれ、動けるような状況に無く……

「私だって、ザフトを心から許すなんて、まだ出来ていない。だが、それとこれとは話が違う。我々が手を取ろうとしているのはザフトではない。オーブであり、プラントであり――」
「それのどこが、違う話なんだ!」

アルゾートはグラムハを突き飛ばすと、銃口を彼に――父へと突きつけた。

「どうせ父さんは、母さんの事なんてどうだって良かったんだろ……?」
「違う、アルゾート。私は――」
「だからオーブに言われるまま、コーディネーターを受け入れ続けるんだ……」

引き金に、指が乗る。

「そんな世界、俺が変えてやる……」
「アルー……やめろ!」

グラムハの前に、カガリが立ちはだかった。
それでもアルゾートは、銃を下ろさない。

「カガリ、離れて!」
「カガリさん!!」

ミリアリアとラクスの悲鳴――しかしカガリはどこうとしない。
撃たせない。
引き金を引かせてはいけない。
だから――

「銃を下ろせ、アルー!」
「どかないならお前ごと撃つぞ? カガリ」

最後通告が響く。
でも、カガリはそのまま。
アルゾートは――苛立ちながら、苦々しく吐き出した。

「なら、終わらせてやる。全ては『青き清浄なる世界のために』――」
「――そんな物騒な言葉、簡単に出すんじゃない!」


声は――……廊下から響いた。




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