だが声がどもり過ぎで、思い付きであることは誰の目にも明らかで。
にやにやと笑いながら、ネサラは意地悪そうに訊く。

「ふうん……ねえ、キラ君のホテル、すぐ傍にあるの?」
「え? 近い……って言えば、近いですけど……」


〈――なんでそこで近いと言うんだ――〉


アスランとイザーク、思わず脱力。

「どこのホテル?」
「いや、でも……」
「大丈夫よ、押しかけたりはしないから。ね?」

彼女の言葉に、アロハパーカーと銀髪おかっぱは思った。


〈絶対着いてくるな〉


その光景が、リアルに想像できる。
どうやらキラは、彼女にえらく気に入られてしまったようだ。

「じゃ、ホテル教えてくれるか、私とこれからデートするか、どっちが良い?」
「……分かりました。ホテルはそこの……レテトニアです」
「――レテトニア?」

瞬間、ネサラの顔色が変わった。

「……へー……そう。そっか、君、VIPなんだ」

同時に、アスランとイザークの顔つきも、少しだけ険しいものになる。
キラの様子も。

「……教えてもらったんだから、ここはおとなしく、引き下がらないとね」

名残惜しそうに、ネサラはキラから腕を放した。

「じゃ、また機会があれば」

彼女は強い足取りで、キラ達に背を向け、歩き出す。
それを見て、アスランとイザークは目を合わせ、

「なんだよ、俺の苦労は水の泡か?」

いつの間にか地元女性たちと離れ、アスランとイザークの傍に来ていたディアッカが呻いた。

「楽しんでたくせに、よく言うな」
「良いじゃんか。どうせなら楽しくやったって」

ディアッカも、ただナンパしていたわけではない。
もっと言えば、キラとアスラン、それにイザークは、ただ遊びに来ていたわけでもない。
四人はある目的のため、海水浴場に足を運んでいた。


それは丁度、ミリアリア達がレテスティニ島に到着した頃の出来事だった――




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