そのホテルは[レテトニア]という名前だった。

「随分大きなホテルね」
「レテスティニ島の中でも、かなり大きなホテルだからな。しかも観光客専用」
「へえ〜……」

ディアッカ達が宿泊しているらしいホテル・レテトニア。島に着いたカガリとミリアリアは、このホテルに直行していた。
時刻は昼過ぎ。陽はまだまだ高くなっていく時間。
なので、とても不思議だった。

「……の割に、お客さんいないのね」
「そういえば……そうだな」

これにはカガリも、素直に同意した。
客が居ない。従業員の姿もほとんど無く、ロビーからフロント、そしてディアッカ達の泊まっている部屋への道のりで出会った人物は、片手の指で足りるほどの人数だ。
おかしいな、と思いながら、とりあえず先にマルキオの部屋をノックする。するとほどなく、予想外の人物の手によって、扉は大きく開けられた。

「……まあ、お二人とも、どうされたのですか? こんな所まで……」
「ラクス!!」
「ラクスさん?!」

思わぬ人物の登場に、カガリとミリアリアは声を揃えてしまった。
確かにラクスだ。
なぜかラクスが、マルキオの部屋にいる。

「なんで……お前も来てたのか?!」
「ええ、一度こちらには足を運んでみたかったので……お二人は? もしや、アスランとディアッカを追いかけて?」
「え、や、その――」
「そうなんです」

カガリが言いよどんでいる間に、ミリアリアは断言する。
隠す必要も無いことだ。

「で、ディアッカ達はどこに? ……まだ導師様と、孤児院の視察中なんですか?」
「いえ……それはもう終わってます。マルキオ様のお仕事は、午前中で全て片付きましたので……みなさん、海へ遊びに行かれましたわ」
『海?!』
「ええ」

微笑ましく呟くラクスの眼下には、絶景の青い海が広がっている。
とてもとても……きれいな海だ。
カガリもラクスの横に立ち、視界を下ろす。
ガラス張りの窓に全面が、青と緑。

二人は、完全に拍子抜けした。



*前次#
戻る0

- 6 /44-