「ちょっと待って、カガリ。あなた、どこまで知ってるの?」
「……その……話すと少し長くなるんだが……マルキオ導師がな、レテスティニ島で孤児院の……まあ、視察のようなものをやるらしくて、その……ほら、あの島、色々あっただろ? いくらオーブでも、完全に『安全』とは言えないだろ??」

レテスティニ島。
オーブ有数の観光名所のひとつ。
絶景のリゾート地は、戦争時――ザフト対連合戦の際、都市部へ大津波を引き起こされる――という大被害を被っている。

ザフト艦から連合に向けられた兵器たちが。
オーブ護衛艦の迎撃を掻い潜り。
領海に着弾。
それは……レテスティニ島の近海で。


それゆえあの島は、オーブにあって、反コーディネーターの意識が高い。


なら――でも――なぜ?

話を聞いても、彼女の中では、謎が深まっていくばかり。そんなミリアリアを納得させようと、カガリは続けた。

「私も、護衛を出すって言ったんだ。けど導師は、物々しくしない方が良いって言って、護衛に見えないような護衛役を連れて行く……って方向で話がまとまって、アスランとイザークとキラと……それにディアッカがついて行くことになったんだ」
「……へえ……」

あからさまに疑いの眼差しを、ミリアリアは向けていた。
筋が通っているようで、つじつまの合わない箇所が見え隠れしている。カガリは嘘が下手――ということもあり、ボロは隠れるどころか、表に晒されているような状態だ。

孤児院の視察『のようなもの』とは一体なんだろう。
そもそも――マルキオ導師が動いていること事態が、引っかかってしようがない。
和平交渉の担い手・導師マルキオ。ラクスが表の和平的象徴なら、裏の象徴はマルキオと言っても過言では無い。先の大戦中、彼は見えない所で、そんな評価をされても申し分ないほどの働きを見せた。

その導師が、動いている。

「……カガリはそれ、誰から聞いたの?」
「あ――アスランだ。決まってるだろう?」
「出かけに教えられたんだ?」
「そう。そうだ」

――嘘だ。
本当に彼女は、嘘が下手だ。
まだ何か、隠してる。

「だから、ミリアリア。あいつはお前を信用して無いとか、そういうわけじゃなくて……単純に、心配かけたくなかったんだよ。変なこと考えるなって。な?」
「……そうね」

嘘だと分かりながら、彼女はあえて、それ以上の追及を避けた。
カガリは自分を思って、こういう説明に終始している。これ以上の事実は、変に探るか、突発的なトラブルが起こらない限り、分からないと踏んでいるのだろう。
だからあえて、知らないフリをする。
それ以上聞いてこないミリアリアに、カガリも安堵した様子で。

そして二人は、現地に――レテスティニ島に到着した。




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