ちょうどその頃―― 「――っくしょぉい!!」 「ディアッカ、汚いぞ!」 「鼻水垂れたわけでもねーのに、汚いってなんだよ。俺はくしゃみしちゃいけないのか?!」 そこはリゾート地・レテスティニ島中心部。車に乗ったディアッカは、ただちょっと激しいくしゃみをしただけで、隣に座るイザークから、白い目で見られていた。 「ディアッカ、風邪?」 「いや、そんなんじゃねーと思うんだけど……誰か噂でもしてるか?」 前に座るキラから心配の瞳を向けられ、ディアッカは、鼻を押さえながら呟いた。 誰か――その噂の主が、ミリアリアなら良いな、と思いながら。 「だが、相手がミリアリア・ハウなら大変だな」 「大変? 何が大変ってんだ」 次に話しに加わってきたのは、車の運転を努めるアスラン。彼は苦笑いを浮かべながら、自分の想像するミリアリアの姿を言葉にする。 「九割方、お前についての文句じゃないか、と」 「あいつがそんなこと――」 ――言うわけ無い。そう続けようとして、ディアッカは止まった。 言われる節は、ちょっと探せば大量に生まれてくる。 特に、今日は―― 「……申し訳ありません。私が変なことを頼んだばっかりに……」 「導師様の謝ることじゃねーよ。俺が決めたんだから」 車には、ディアッカ、イザーク、キラ、アスランの他に、もう二人ほど乗客がいる。 マルキオ導師と、ラクス・クライン。 二人もまた、『旅行』のメンバーである。いや、そもそも『旅行』の発案はマルキオその人で―― 「……まあ、後からフォロー入れれば、何とかなるだろ」 ディアッカは――ある種、願望的思いを口にしていた。 |