「……いや、すまん……けど本当に、ディアッカの態度に『何なんだろうなあ』って思ったから……」

一応取り繕ってはみるものの、それが効く様な状態でなければ、例え効く状態であったとしても、しっかり効いてくれるような取り繕い言語でもない。
要は、ミリアリアの怒りの矛先は、カガリに向いたままで――

「良いじゃない! カガリのとこは、アスランと円満家庭築いてるんだから! こっちなんて――」
「待て! 私とアスランは、まだ夫婦じゃ――」
「まだ、でしょ?! どうせその内、あっさり結婚式とか挙げちゃうんでしょ?!」
「お――――」

ミリアリアの問題発言に、カガリは言葉を失った。
開いた口が塞がらない。
それを良いことに、ミリアリアは直もまくしたてる。

「それに比べて、どうせ……どうせ、私達なんて……」
「……いや、あいつはすっごく、お前のこと好きじゃんか。そんな、卑屈になるなって」
「だって……」

切なく、ミリアリアが呻く。

「今日、私達が付き合い始めた日なのよ?」
「そうだなあ」
「用事、何も無いって言ってたのよ?」
「確かに、何にもなかったんだろうな」
「だから……ケーキ用意して、遊びに行ったのに……」
「…………うん」
「なのに何で、あいつは家に居ないのよ!!」



だんっ!!



拳がテーブルを強襲する。

「まあ……行くって言ってなかったんだろ?」
「言ってなかったけど、あれだけ用事無いか確認してやってんだから、少しは勘働かせて、家でおとなしくしてるのが男ってもんでしょ?! どーしてそこで、イザークさんと出かけちゃってるわけ?!」


衝撃だった。
家に居ないから、メールで居場所を訊いたら、レテスティニ島というオーブの外れにあるリゾート地に居ると返ってくるし、急用? と訊けば、友情を永遠に大切にしようという親睦旅行――つまり、思いっきり遊びに行った、というわけだ。


しかも日程は、三泊四日と来る。
完全に、本格的に、気合を入れた『観光地めぐり』の旅なのである。


「正確には、キラとアスランとイザークとディアッカ……の四人旅なんだが……」
「二人だろうが四人だろうが、旅行してる事には変わりないのよ!!」

ミリアリアの怒りは収まらない。
収められるわけが無い。
彼女の中で、ディアッカは自分よりも友情を取った――という事になっているのだから。

「こうなったら、カガリ……私達も、旅行いっちゃおう!」
「……待て。落ち着け、ミリアリア。それはいくらなんでも、軽率……」
「軽率結構! 待ってなさいよ、ディアッカ……ビーチで伸ばしてる鼻頭、もぎ折ってやるんだから!!」

ディアッカへの怒りに闘志を燃やすミリアリアを横目に、カガリは悟った。


〈……駄目だ、止められない……〉


こうして、カガリの予定など総無視で、二人の「ディアッカ追っかけ旅行」は決定された。




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