山中 「ディアッカ、遅い!」 「……や、お前が体力あり余りすぎなんだよ……」 前方から大きく手を振るミリアリアに、ディアッカは大きなため息で答えた。 そこは山の中。高いところから戦場の風景を一歩引いた目線で撮りたい――というミリアリアからの要望により、二人は今、山を登っている。 <なんで山登りしてんだよ、俺……> 心の中でディアッカは呻く。 高いところから、と聞いた瞬間、彼はヘリを使うと思った。 そしたら、そんな予算など無いと返ってきた。 ゆえの登山である。 「ほらほら、ディアッカ! 見てよ、すごい!!」 「あー?」 何をそんなに喜んでいるのか――……不思議に思いながら彼女の横に追いつくと、そこにはディアッカの想像しない世界が広がっていた。 戦火を撮りに来た二人。しかし、彼らの目が映すのは、山々と、その間から見える海と、光が生み出すコントラスト。 まさに、絶景―― 「ね? すごいでしょ?」 「……たしかに……」 苦しみ。悲しみ。命のやり取りを撮りに来た二人。もう少し進めば、線化が見えてくるだろう。 しかしここは。 この場所は……荒む心に安らぎを灯す、癒しの風景を映していた。 -end- 結びのコトバ 一寸先は闇。表裏一体、紙一重の世界。荒廃する世界の傍に、とても綺麗な絵図もある…みたいな。 - 69 /69- |