アウル×ルナマリア



「ホワイトデー?!」
「…………お前ってさ、ほんと行事ゴトに興味無いよなー……」

一ヶ月前、ルナマリアがすっかりバレンタインを忘れ去っていたおかげで、彼女からチョコを貰いそびれたアウルは、今回もまたがっくりと肩を落とした。
そんな予感はしていた。この反応も予想通りではあったが――やはり現実に直面すると、衝撃ははるかに大きい。

「ごめんごめん。でもさ、私チョコあげて無いから、貰えるなんて思ってなかったし……」
「で、面倒なことはすっかり忘れてたってか」
「だから、誰からもお返し貰うことないから!!」

確かに、ホワイトデーと言えば「バレンタインのお返し」行事である。けれど、「永遠の愛を誓い合う日」とかって話もあるのだから――……
――いや。
そこまで考え、アウルは首を振った。
行事ゴトに疎いルナマリアが、そんな説を知るはずも無い。それに、渡そうとしているのは、ディアッカから仕入れた『ドッキリクッキー』である。
チョコをくれなかったルナマリアへの、せめてもの復讐劇――

「……でもありがと、アウル。すごく嬉しい」
「へ?」

急にルナマリアが神妙な面持ちをしたので、アウルは呆気にとられてしまった。
その上、彼女も鞄から包みを取り出し、

「はい」
「は?」
「バレンタイン、渡せなかったから」

ちょっとだけハニカミながら、渡したそれは――チョコレート。
一ヶ月遅れの、バレンタインチョコ。

「ルナ……」

じーんとして、包みを開け、チョコを見て……アウルは幸せをかみ締めた。
まさか、こんなサプライズがあるとは思わなかったから。
そして――青ざめた。


「――っあ、まって、ルナ!!」


自分の渡したプレゼントを思い出し、アウルは慌てた。
見せてはいけない。回収しなければ――と手を伸ばしたが、一歩遅かった。
ルナマリアの眼下に、真っ赤に染まったクッキー達が広がっていく。
人智を超えた、果たして食べられるものかすら分からないクッキーが群れを成している。


そして引きつっていくルナマリアの顔。


「……アウル?」

口元をぴくぴくと痙攣させながら、ルナマリアはアウルを見た。
そこには怒りしかない。

「あ、あのな、ルナ。えーと、それは、その……」
「問答無用―――――――ッ!!」



ばきょっ。



怒号とともに繰り出したルナマリアの二の腕は、いとも簡単に、アウルの首元を捕らえるのだった。





-end-
結びのコトバ
最後はアッパーでアウルを落としたルナマリアさん。
よほどむかついたご様子。
てか、ディアミリ編とオチが変わらな――(殴)



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