レイ×メイリン



「……ええと」

その箱の蓋を開けた瞬間、メイリンは固まってしまった。

「どうした?」
「え? あ、ううん……や、うん。なんでもない、よ?」

何でもない――と言うには、とてつもなく語弊のありそうな態度を前に、箱を渡した張本人・レイは、眉間に一本だけしわを作った。
本日はホワイトデーである。そしてこれは、レイからのお返しプレゼント。嬉しいが、その中身は非常に大胆不敵なものだった。
メイリンは少々――もとい、ひどく青ざめながら、直径5センチ四方の箱に眠る物体を取り出す。
掌に簡単に乗っかってしまう、平べったくて丸い物体。
一見すると、クッキーに見える。




――しっかりとさえ見なければ――




「……ねえ、レイ」
「なんだ?」
「これ、クッキーで、良いんだよね?」
「クッキーにしか見えないだろう」
「…………クッキーにしては、こう……何て言うのかな、鼻を突くってゆーか……すごく、のどに染みそうな色と香りが漂ってるんだけど……」

二人は掌のクッキーに注目した。
確かに、クッキーにしては、すこぶる赤い。
甘いお菓子からは、なぜだか香辛料の匂いがかもし出されている。だが、レイは言い切った。

「俺も食べたが、かなり美味かったぞ?」
「……そ、そう……」

メイリンはごくりと喉を鳴らす。
レイが美味しいと言うのだから、美味しいに違いは無いのだろう。それに、レイがバレンタインのお返しにくれた物なのだから。
食べなくては。
彼女は覚悟を決めた。覚悟を決め、クッキーを口に入れた。
入れて――同時に顔色が変わっていく。
青に。

「〜〜〜〜ッ!!!!!!」
「メイリン?!」

驚くレイの声を聞きながら、メイリンはゆっくり倒れていった……





-end-
結びのコトバ
メイリン頑張る(爆)
そして一風変わった味覚設定にされたレイ(ごめんよ)



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