カズイ2



――ミリアリアが捕虜に、食事を運んでいる。
その事実に最初に気がついたのは、カズイだった。



きっかけは簡単。ミリアリアはカズイと一緒に休憩を取ったが、食事にはほとんど手をつけない。その後、自室で休むと言って食堂を出た。心配したカズイはミリアリアを部屋まで送り、自分も部屋に戻ろうとした。でも――何のいたずらか無性にのどが渇いてしまい、食堂に向かおうとして……見つけてしまったのだ。

通路を歩くミリアリアを。

最初は気にしなかった。行く方向も同じだから、彼女も何か飲みに行く……そんなところだろうと、声もかけようとした。
――でも、なぜだかためらい、ついには目的地までたどり着いてしまう。

<何してるんだろう……俺……>

呻き、カズイも食堂に入ろうとした。
一歩踏み出し、足を止める。

ミリアリアが出てきた。時間にして、ものの数秒。しかも手には、食事一式が並べられたランチプレートが大事そうに乗せられている。

一瞬我が目を疑った。

次に考えたのは、ミリアリアの心境。
自分とは一緒に食べなかったのに……昨日サイと三人だとしっかり食べたのに、2人っきりだと食べれないとでも言いたいのか?
時間が経てば後悔するようなことも、今は平気で考えられる。

結局カズイはミリアリアに声をかけず、彼女の行方を追った。
言っちゃ悪いが――とても分かりやすい尾行である。もし彼女が周りに意識を向けられる状態なら、いとも簡単に発覚するであろう程、あからさまなつけ方だ。
カズイがすぐ分かったのは、彼女の行き先が自室ではないこと。全然別方向に向かっている。もしや違う場所で、別の誰かと食べるのか……などと、思考はどんどんおかしい方向に傾いていく。

――そんなに長続きはしなかったが。

「……は?」

彼女が入って行く部屋を確認して、カズイは目を点にした。

そこは牢獄。
どこをどう見ても、牢獄だ。

どういうことだろう。
考えて、考えて……浮かんだのは、捕虜に食事を運んだ、という答えだけ。まさか捕虜の目の前で、おいしそうに料理をほおばるわけも無いだろう。

目の前が真っ白になる。

ミリアリアの考えていることが分からない。どうしてついこの間殺そうとした人間の元に、易々と足を運べるのだろう。まあ、あの事件はごく一部の人間しか知らないから、誰かに頼まれたのかもしれないが……なぜ断らないのか。

……いや、本当に頼まれたのか? 彼女が食堂にいたのは数秒間。誰かに頼まれてそれで……とは、実際考えにくい。

頭が混乱する。
奥にはコーディネーターの捕虜兵と、様子のおかしいミリアリア。

怖い。

捕虜の存在もひどく恐ろしいが、何を考えているか分からないミリアリアも、カズイにとっては恐怖の対象だった。

「……さ、サイ……サイに言わなくちゃ……」

恐ろしくて――逃げ出した。





-end-
結びに一言
時間的にはミリィが初めてご飯持ってった次の日あたりで。一度ボツりましたが、連載部屋創設記念に復活(笑)



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