キラ*ラクス



「……あれ?」
「どうかしましたか?」
「今、誰かに呼ばれたような……」

そこはマルキオ邸。縁側に座るキラは、ふと辺りに視線を走らせた。
けど、いるのはラクスだけ。他の誰も、彼の目に入ることは無い。

「気のせい、かな……」
「どうでしょう。もしかしたら、どこか遠くで、キラを呼んだ方がいたかもしれませんわよ?」

優しく呟き、ラクスはキラの横に立った。

二人を包む、秋の風。
温かさの中に厳しい冷気を隠す、秋という季節。

「ところでキラ、手紙が届いてますわよ?」
「手紙? 僕に?」
「ええ」

差し出される一通の封筒。受け取り、差出人を確認すると、あまり聞き覚えの無い名前が書いてあった。
不審に思いながらも、封を開ける。そして手紙に目を通した直後――送り主と名前が繋がった。

「ああ、あの子だ。オーブの慰霊碑の前で、インパルスのパイロットと一緒にいた……髪の短い子。メイリンのお姉さん」
「まあ……でも、その方がなぜ、キラに?」
「読んでみて」

良いのですか? と訊くと、キラが静かに頷くので、ラクスは言われるままに手紙を読んだ。
それは、キラへの「お願い事」を記した手紙。
端的に言うと、キラに会いたい、という内容だった。キラと、自分と、シンと、三人でゆっくり話がしたい、と。

「優しい方、ですのね」

文脈の節々に、キラを気遣う言葉がある。
でも、シンのために、会ってほしいと。
未だ戦争の傷に打ちひしがれているシンのために、彼のために会ってほしいと。


「私も、もう一度お会いしたくなりましたわ。……ルナマリアさんと」




end
ルナマリアの切実な願いを感じ取ったからこそ、本人に会いたいと思うラクス――という感じで。



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