※前書き
庭先で見つけた小さな花を、ミリアリアに差し出すディアッカ。けどミリアリアは、その真意を把握しきれなくて――……





「……何? これ」
「花」

「それは、見れば分かる」
「なら聞くなよ」

「何であんたが私に花を渡すのかって訊いてるのよ!」
「強いて言うなら、好きだから」

「…………私、耳おかしくなったかしら。それとも、あんたの理解力が地に落ちたのかしら」
「多分、ミリアリアの読解力が乏しいだけだと思う」
「言い切ったわね?」


「ごめん。言い過ぎた。謝るから、耳抓るのだけは止めて下さい」


「なら、ほっぺた抓って良い?」
「うーん、それも勘弁願いたい……」

「じゃあ、どこ抓れば良いのよ」
「そんなに抓りたいの?」
「うん。思いっきり抓りあげたい」
「んー………………あ、ここなんてどう?」

「…………本気でケンカ売ってる?」
「あらー……まさか、いつもの冗談まったく通じないほど怒ってらっしゃる?」
「通じるように見えるなら、本当のアホね」

「機嫌直せよ、ミリアリアー。悪かったって」
「誠意が全く見えないから却下」
「誠意……? 庭先で、どうやって誠意見せんの?」
「庭先でも、見せようと思えば見せられるわ」


「例えば?」
「……少しは自分で考えなさいよ……」


「それもそーだな。――じゃ、ほい、お姫様」
「? ……手なんて出されても、あげるものなんて何も無いわよ?」
「おいおい、これくらいは察してくれよ。ほら、手」
「手、って……ええ?! 乗せろってこと?!」


「…………なんか、泣きたくなってきた」


「あんたが泣く理由、どこにあるのよ」
「意思が全く伝わらなくて」
「表現方法が悪いんでしょ」
「誠意を見せろってゆーから、手を取って、お家までエスコートしようとしたのにさー」

「……それ、誠意……?」
「家の中まで、躓かないよう慎重にエスコートしようという気配りは、誠意に当たりませんか?」

「そう言われたら……まあ、うん。そうねえ……じゃ、仕方ないからエスコートされてあげる」
「棘あるなあ」
「……とか言ってる割に、すっごいにやけてるけど……」

「だって、ミリアリアと手ぇ繋げてるから」
「!!!! は、離して! 何で握ってるのよ! エスコートって、添えるだけでしょ?!」

「嬉しいもんは、しようが無いって」

「……う、れしい?」

「言ったじゃん。好きだから花を渡したって。好きだから、手をつなげるのも嬉しいの」
「……ふぅん……」
「ミリアリアは、俺と手ぇ繋いでも、嬉しくない?」

「……悔しいから、絶対、嬉しいって言ってやんない」





-end-
素朴アイテム「花」で「手を繋ぐ」まで持っていけるディアッカさん。
ある意味特技(笑)



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