迷いの理由



ある日サイは、不思議な光景を目にした。それはディアッカを慰めるミリアリア――という図式。
あのディアッカに悩み事が――? と心配になったサイは、彼の傍を離れるミリアリアをつかまえ、訊いた。

「ディアッカ、どうかしたのか?」
「あ……えっと……」

問われたミリアリアは、言葉を選びながら説明した。

討って討たれての世界を変えたいと願うディアッカ。
しかし一方で、彼の選択はかつての仲間と対峙する現実と直面した。
好ましくない現状は、迷いと悩みを生む。

「だから、ちょっとでも、支えになれればなーって」
「ふぅ……ん…………?」

ふとディアッカを見ると……彼はなぜか、極上の微笑でこちらを見ていた。
まるで、何かを成し遂げたような達成感が見える。
なぜだか――とても気になった。

「……俺もちょっと話してくるわ」

ミリアリアをその場に残し、サイはディアッカへと走った。
よっ、と手を軽く上げながら、隣に腰を下ろす。

「悩みだって?」
「おう。俺も悩み多き青少年だからなー」

両手を組み、のびをする姿からは、悩みを抱えているようには全く見えない。

「……いつもは部屋で考え事するんだけどな」
「?」

ひどく耳に引っかかる言い方だ。
怪訝な顔でディアッカを覗き込むと、彼はニヤニヤと笑いながら続けた。

「俺がこんな目に付きやすい所で、分かりやすく『悩んでます〜』みたいな態度、とると思うか?」
「……まさか……ミリィに慰めてもらうために、わざと……?」
「構ってほしい時とかにやると、かなり効力あるんだぜ」

呆れるサイ。その横で、ミリアリアに構ってもらってエネルギー充電の完了したディアッカは、こちらを心配そうに窺う愛らしい少女を目に入れながら、うきうきと宣告する。

「これ、あいつに言ったら容赦しないからな」
「……善処するよ……」

満面に笑みを浮かべている分、怖い発言。
サイは絶対言うまいと心に誓った。しかし――彼は本人が自覚する以上に、分かりやすい性格をしている。
隠し事が苦手な人間なのだ。

ミリアリアが『隠し事』に気がつき、サイを締め上げ――もとい、彼から『隠し事』の内容を教えてもらい、ディアッカの元に乗り込んでいくのは、二日後のお話……





-end-
結びに一言
web拍手第二段。一本目の感動をぶち壊す一本(笑)



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