ディアッカ



生まれて初めて、写真に心を奪われた。
サイの部屋で見つけた集合写真……そこにはミリアリアが写っている。服装からしてAAに乗る以前のものだろう。
他に写ってる奴らで分かるのは、キラとサイだけ。赤い髪の少女も見覚えがあるが……たいして気にならなかった。

ミリアリアの笑顔が強烈すぎて。

その、初めて見る『笑顔』に愕然とする。



――俺はこんな顔知らない――



はじめて見た彼女の顔は、絶望に打ちひしがれたものだった。
2度目に見た時は、涙と激しい怒りの入り混じったもの。
3度目は恐怖と哀れみ。
4度目は同情と憎らしさ。

当時を思い出して、やりきれない感情が生まれる。
……考えてみたら、あんな出会いをしながら、よく笑いかけてもらえるもんだ、と過去の自分を反省するほどに。

随分ひどいことを言った。
それこそ――ナイフで刺されたって文句は言えない。

なのに彼女は笑いかけてくれる。それが嬉しかった。ミリアリアの笑顔を見ると、幸せな気分になって。
でも……この笑顔とは違う。

ディアッカが知ってるミリアリアの笑顔は、こんなに天真爛漫なものじゃない。もっと憂いたものだ。
ここは戦場の真っ只中だし、心身ともに疲れているのもあるだろうが、1番の理由は……あれしかないだろう。

彼女にとって、1番大切な男がいない。ディアッカの知らない、でも他のクルーは全員知っている、ミリアリアの大切な人。

失われた大切な『命』。

これは『彼』に向けられた笑顔だろうか。
『彼』の前なら、ミリアリアはこんなにも明るく笑うのか。

……この中に、彼女の『想い人』はいるのだろうか。



写真のミリアリアは、まるで大輪の花を連想させるほど、あたたかで幸せそうな笑顔。
なら今のミリアリアは――

たとえて言うなら、花びら。
大輪の花から零れ落ちた、オレンジの花びら。





-end-
結びに一言
ディアッカが所用でサイの部屋に入って昔の写真を見つけるとゆー、とても無理な設定を押し通してみました。

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