はじめての海



その日、二人は海にいた。沢山の客でにぎわう海水浴場にディアッカとミリアリアがいる理由、それは、

「うわ、すっげーな」
「え、もしかして海はじめて?!」
「海は初めてじゃないけど、海水浴は初めて」

思わぬディアッカの衝撃発言に、ミリアリアは耳を疑った。
まあ……海を舞台にデートを決め込んでいるわけなのだが……

「プラントじゃ、こんな機会無かったからなー」
「……人工の海は、あるわよね?」
「あるけど、一緒に行く奴いなかったからな」
「お父さんとか、お母さんとか……」
「あーだめだめ。あそこら辺に、そういった『家族行事』を期待しちゃ駄目」
「……そーなんだ……」

ふと、ミリアリアの顔が曇る。
訊いてはけないことを訊いてしまった……そんな罪悪感が生まれたのだろう。
だが、ディアッカは気にするどころか、

「それよりさ、いつまで着てるの?」

彼女の格好に疑問を投げかけた。
海パン姿で満喫する気満々のディアッカに対し、ミリアリアは水着の上からパーカーを着た状態である。

「良いじゃない、これで」
「何でさ。せっかく海に来てるのに」
「だって……………………そんなにスタイル良くないし」

本音的理由は自分でも不本意なものと感じているのか、最後の方は、ミリアリア本人ですら聞き取れないほど、小さな声となっていた。
しかしディアッカは、是非とも水着姿を拝ませて欲しいらしく、

「まぁたまた、謙遜しちゃって〜」
「だっ……そんなんじゃ」
「それとも、脱がせて欲しい?」
「――い、いいっ! 自分で脱ぐっ!!」

冗談抜き、真剣そのもののディアッカの瞳に、彼女はパーカーの首回りを握りしめた。
とある夏の日、オーブ有数の海水浴場で、そんな二人の姿が見られたとか見られなかったとか……





-end-
結びに一言
四季第二弾・夏模様編。夏は恋人達の季節(決め付けるな)なので、いちゃいちゃと(^^;



- 22 /69-