星のはざまで



戦争が終わり、ミリアリアはオーブへ戻った。
復興していく国の片隅で、彼女は家の中に閉じこもっている。

トールの写真を眺めて。



怒涛の日々は過ぎ去り、やってきたのは平凡な日々。
その中にあって、唐突に違和感を感じた。


トールがいない。


気持ちの整理はついていた。でも、あの異常ともいえる生活から自分達のいた「日常」に戻った時、ふと襲い掛かってきた違和感。
それはこの空間に、トールがいないから。


この穏やかな時の中にいると、時々、あの戦争は夢だったんじゃないかと感じることがある。
そんな幼い夢物語を消し去ってくれるのが、トールがいない現実。


AAでよく願ったこと。
トールは生きてるんじゃないか……地球上のどこかで、自分を探しているんじゃないか……
幻想も良いところだ。


そう、それは幻想。
彼女の夢。
ちゃんと……分かっている。


このままじゃいけないことも。


部屋に閉じこもるミリアリアを、みんな心配している。
戦争で苦しんだみんなが、痛みを乗り越え、新しい生活をはじめながら――彼女を気にかけている。
カガリは国家元首として朝から晩まで飛び回っているし、、サイは色々勉強してる。マリューもモルゲンレーテで働き出した。

ディアッカは……ザフトに復隊したと聞いた。
あの絶望的な状況から、一体どんな手を使って戻ったのか不思議でしようがないが、彼も自分の道を見つけ、歩き始めている。


……会いたい。


思い出すと会いたくなる。
会いたいと――ココロが悲鳴を上げる。


別れの時、伸ばせばとどいた手。
ミリアリアは……伸ばさなかった。

伸ばせなかった。
怖くて。
わがままを言ってしまいそうで。


……いつもこうやって、二人の男性について考える。


頭はトールでいっぱいなのに心はディアッカを求めている。
二つの感情がぶつかり、どうすることも出来なくなって、彼女はまた、トールに聞く。


――私は、どうすれば良いんだろう――





写真のトールは、変わらぬ笑顔を彼女に向ける。
どんなに話しかけても、彼が答えを出すことは無い。
何度も何度もくり返して、彼女は少しずつ「現実」と向き合えるようになってきた。

トールがいない現実。
戦争の終わった世界。
そして……手の届く場所に、ディアッカがいないこと。


会いたい。ディアッカに会いたい。

そろそろ、素直になってもいい時期ではないのか。
このままじゃ本当に、二度とディアッカに会えない。
自分から動き出さないと――


「……そう、だよね」


自分の道は、自分で決めないといけない。
何がいけないって――意味がない。
それを彼女は、よく分かっている。

決めた。ディアッカと連絡を取ろう。
そして……話をしよう。



動くと決めた彼女の行動は早かった。
すぐさまベッドから降り、着替えを済ませ、

「行ってくるね」

トールに手を振り、部屋を出た――





-end-
結びに一言
種DVD特典映像「星のはざま」脳内補完。
これにて「オレンジ」完結です。
ご愛読ありがとうございました。

*前次#
戻る0


- 20 /69-